上山容弘が説く“20秒間観戦”の楽しみ方 息つく暇もないトランポリンの「緊張感」
表現の仕方や質の違いを生む「選手の個性」に注目
一つひとつの質問に丁寧に答えるその姿勢には、トランポリンへの情熱が垣間見られた 【写真:C-NAPS編集部】
あとは中国勢ですね。国別に強さを比較した場合、一番強いのは中国です。どの選手が出てくるかは分からないにしても、中国の選手というだけで見応えはあるんじゃないかなと思います。
これは中国勢に限らずですが、トランポリンは国によって特色のあるパフォーマンスがあるわけではなく、どの選手も本当に個々の特色を生かした演技をします。練習や指導もそれぞれに合わせたパーソナルなメニューや、持ち味を生かすためのものが多いですし、トップレベルになるとやっている技自体はほぼ変わりません。その中で、表現の仕方や質が選手によって違ってくるのです。
採点基準から逸脱しない範囲で、自分のリズムの取りやすさ、次の跳躍へのつなげやすさも考慮しながら、それぞれが自分の色を出します。高さがある選手、きれいに回る選手、ひねりが得意な選手、あるいはどれもうまくこなせるオールラウンダーなど、それぞれの個性が見どころです。
現役復帰のきっかけ、そして「東京五輪」へ思い
リオ五輪代表落選後に一度引退も、東京五輪に夢を馳せて現役復帰を果たした上山 【写真:アフロスポーツ】
復帰後はなかなか試合勘が戻らず、パフォーマンスがうまく発揮できない時期もありました。しかし、1年かけて試合勘を戻し、1年目で強化指定選手に返り咲くことができました。2年目の18年は、世界選手権の代表になるという目標をクリアし、さらにアジア競技大会にも出場できました。
そして、19年は11月の世界選手権の日本代表に選ばれました。その大会で決勝に進出し、かつ日本人最高位ならば東京五輪出場権を得られます。厳しいチャレンジではありますが、挑戦できる機会をつかんだからには、もう一度五輪で自分のパフォーマンスを発揮したい――その気持ちだけで今はやっています。
現役復帰を決める際に、きっかけとなった選手がいます。中国の董棟(ドンドン)という選手です。彼は五輪で金(ロンドン)・銀(リオ)・銅(北京)のメダルを勝ち取っているレジェンドなんですが、僕が解説者としてリオ五輪に行った際、帰りの飛行機がたまたま一緒だったんです。そこで彼は、「次は東京なんだから絶対にやらなきゃダメだよ」と声をかけてくれました。
董棟は国際大会で一緒に戦ってきた、僕が“ノッていた”(世界ランキング1位の)時期に出てきた選手で、「当時よく演技を見ていた」「僕のヒーローなんだ」と言ってくれました。海外のメダリストにそう言ってもらえたのはすごくうれしかったし、これ以上ない励みになる言葉でした。そんな彼の思いや、2020に向けてサポートしてくれているすべての方々に感謝の意を示すためにも、東京五輪の舞台に立ちたい――それがいまの僕にとって原動力であり、モチベーションです。