連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

八木かなえが立つ“静寂と歓喜”の競技台 ウエイトリフティング場が一体化する瞬間

C-NAPS編集部

世界選手権のほとんどの階級で優勝する中国勢

同じアジア人でも、中国はどの階級でも強い選手ばかりだと警戒する八木 【写真:C-NAPS編集部】

 アジアには強い国が多いのですが、その中でも中国はどの階級も強敵ぞろいですね。最近の世界選手権ではほとんどの階級で中国の選手が優勝しています。すべての階級を合わせても男女ともに最大4人ずつしか派遣できない五輪に「どの選手が出るのか」は注目です。出るからには当然、金メダルを目指してくると思います。

 日本も中国と同じアジア人で、体格に大きな差はありませんが、中国の強さの秘訣は「無駄のない動き」にあります。全身の連動性、体の使い方、柔軟性、バランスなどに優れていて単にパワーがすごいというわけではありません。ウエイトリフティングは、いかに上手く全身を使って上げるかがポイントなのですが、中国の選手は体の使い方がすごく上手だなと感じます。

 体格でいうと、アジアの選手は軽量級に強い選手が多く、欧米だと体の大きい重量級に有力選手が多い傾向にあります。アジア勢は体が小さいため、欧米選手との骨格や筋肉の違いはハンデになり得ますが、それをカバーするには技術がやはり重要ですね。

 私自身もウエイトリフティングを始めるまでは器械体操をしていました。体の使い方や柔軟性、瞬発力やバランス力など、パワー以外の技術は器械体操によって培われました。後は、高校でもトップのチームに在籍していたり、良い指導者に巡り合えたりするなど技術をきちんと教わってきたことも、今につながっていると実感しています。

過去2回の五輪よりも「出たい」と強く思う“東京の夢舞台”

観客と「一体化」できる競技だからこそ、自国開催の東京五輪には人一倍の思いがある 【写真:ロイター/アフロ】

 過去2回の五輪は53キロ級での出場でしたが、東京五輪から階級変更があり、55キロ級で出場を目指すことになりました。階級が2キロ変わるとライバルにも強力な選手が増えますし、今まで上げていた重量では全然太刀打ちできません。体を大きくして重い重量を持てるようにパワーアップを図っていきたいです。これまでの五輪よりもハードルが高く、難しい状況ではありますが、代表決定の2020年4月までの期間を悔いのないように頑張りたいと思います。

 日本での開催ということで、「出たい」という思いは、ロンドンやリオデジャネイロと比べても強いですね。いつも応援してくれている人たちが身近にいる五輪なので。過去の五輪でも開催国の地元選手への応援は特別大きかったですし、東京ではこれまで以上の声援を受けて、会場のみなさんとウエイトリフティングを通じて歓喜の瞬間を共有することができればと思います。

 東京五輪は開催国枠が男女ともに3つなので、階級によっては日本で一番になっても出られないかもしれない大会です。今は4つ目の出場枠を獲得するためにさまざまな大会に出場しているのですが、自分の階級だけではなく、違う階級の選手もライバルになります。出場枠獲得の「しんどさ」は少しありますが、そういったさまざまなプレッシャーもパワーに変えられるように、楽しみながらフィジカル・メンタルの両面を整えていきたいです。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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