連載:指導者として、レジェンドたちが思うこと

松井稼頭央監督が若獅子たちに送る言葉 「技術の追求に終わりはない」

ベースボール・タイムズ
 二軍戦を戦い、若手の成長を促しながら、一軍の試合へも選手を送り込む。二軍監督の仕事は多岐にわたる。だがそのすべてが、自身の現役時代と同じように、「監督・松井稼頭央」の成長の糧になる。忙しい日々を過ごしながら、これから先の、長くなるであろう、第二の野球人生を見据える。

監督としての信念と覚悟

アストロズ時代の2009年には日米通算2000安打を達成。恩師の東尾修氏(右)がお祝いに駆けつけた 【写真:ロイター/アフロ】

――二軍監督を務める中で、試合中の采配でも難しさを感じることがあるのではと思いますが?

 二軍は育成することが大事ですけど、育成しながらも一軍の状態も知っておかなくちゃいけない。今、一軍がこういう状態だから、もしかしたらこの選手が呼ばれるかもしれないとか、この選手が好調だから上で使ってもらいたいということもある。二軍戦を戦う上では、そこが一番難しいところですね。ただ勝つことを目指せばいい訳ではないですし、だからと言って勝ちを目指さないと緊張感のある試合はできない。僕自身、勝ちに行きたいですし、選手にとっても、勝ちを目指して緊張感のある試合の中でプレーすることはすごく大事。そこで成功する、失敗するというのが成長につながる。なるべく緊張感のある、1点差、2点差の試合を多くしていきたい。

――現役時代、多くの監督の下でプレーされてきましたが、特に印象に残っている監督はいますか?

 僕を一軍に抜てきしてくれた東尾(修)監督ですね。東尾監督と出会っていなければ今の僕はない。当時、試合中に僕がゴロを捕るまでは見ているんですけど、投げる瞬間は目を逸らすんですよ。「その瞬間を見たら使えないから」って……(苦笑)。それでもコイツを使おうと思ってもらったこと。その信念であったり、覚悟であったり、そういうことも含めて、監督というのは決断をしないといけないということを、あらためて今になって思いますし、その難しさも感じますね。口ではいろいろ言えても実際に行動に移すことは難しいですからね。でもその分、やりがいがあります。

未来の自分像は?

ライオンズのため、若い選手のため、忙しいながらも充実の日々を送る 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――多くのファンが、将来的に一軍の監督になって欲しいと思っているのではと思いますが?

 いやいや。そこは考えていないです。今はファームの選手と一緒になって汗を流して、目の前のことで精一杯ですから、先のことは考えてないですね。まずは目の前のことです。

――監督として必要な能力、身につけていきたいものはありますか?

 今は目の前のことに集中していますけど、監督としては先を読むことが必要だと思います。先のこと、さらに先の先のことを読めるようにしないといけない。試合は常に動いていますし、その中で選手をどう使って、どういう作戦をするか。先を読んで動く必要がありますし、逆に動かない方がいい場面もある。いろんなことを考えなくちゃいけないですから大変ですね。ただ、最初の頃と比べると、少しは確度が上がったんじゃないかなと思ってます。

――自身の中で理想の監督像はありますか?

 それもまだ分かんないですね。まだこれからです。まだ真っ白なので、これから自分の色、自分のスタイルを作って行きたい。毎日、勉強中ですから、いいものはどんどん取り入れて行きたいですし、どんどん新しいものにもチャレンジして、視野を広げられるようにしていきたい。変わっていく楽しみというのは、選手だけじゃなくて、僕自身についても同じです。

――引退してからの方が忙しいようにも感じますね?

 そうですね(苦笑)。毎日、目まぐるしく動いてます。引退してひと息つけるかなとも思いましたけど……。でもすぐに声をかけてもらって、ユニフォームを着させてもらっていることは本当にありがたいこと。二軍監督というのは本当にいろんな経験ができます。その中で、ライオンズのために、若い選手たちが大きく育って一軍で活躍できるように、その力に自分がなりたい。二軍にいた選手が一軍に上がってヒットを打ったらものすごいうれしいですからね。その感覚を、これからもっともっと味わいたい。

(取材・構成:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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