東京2020で活躍期待の車いすテニス 眞田卓「金メダルは日本人で争いたい」

瀬長あすか

“世界トップ10”をキープするために

昨年のアジアパラ大会では、日本での車いすテニス第一人者である国枝(写真左)とダブルスを組み優勝。東京パラではシングルス決勝での対戦を望む 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 車いすテニスは、ネットより低い位置でボールを打ち、さらにラケットを持ちながら車いすを操作する。そのため、よほどトップレベルでなければミスショットも多い。

 そこで眞田は、普段からボールに威力があり、ミスの少ない健常者と打ち合い、国内でも常に世界のレベルを意識しながら練習に励んでいる。

 もう一つ、“世界トップ10”をキープするために有効だったのが競技用車いすの改良だ。

 眞田は片足切断。日常生活で車いすを使用せず、義足を着けて過ごしているため、チェアワーク(車いす操作)の強化には「人一倍の練習量をこなすしかない」という。一方で切断の選手には、残された全身の力を使ってパフォーマンスができる優位さもある。

 そんな特長を最大限に生かすにはどうしたらいいのか――。たどり着いた一つの答えが、車いすのシートに取り付けた「ニーグリップ」だった。アイデアを考えたのは、眞田自身。もともとバイクに乗ることが好きだった眞田は、バイクにまたがるように両足で挟んで座ることで、これまでの車いすを効率良く下半身の力を使えるマシンに変えたのだ。

「世界で全く誰もやったことがないこと。自分が競技用車いすにどういうものを求めるのか、誰かを参考にするのではなく、自分の乗りやすさをとことん追求しました」

 その後も改良を重ね、車いすに合わせて筋肉量もアップさせた。もはや手ではなく、太ももの筋肉で車いすを操作する感覚も養われてきたという。ターンは以前より俊敏になり、高い位置でボールを取るときの安定性も増した。

 東京パラリンピックは約1年後に迫ったが、眞田に焦りはない。

「これまでよりも筋肉量をアップさせてツアーを回り、年内に世界ランキング7位以上に入り、来年はグランドスラム出場が目標。東京パラリンピックの第1シード、第2シードを取れれば、国枝選手との対戦は決勝です。金メダルマッチは日本人で争いたいですからね」

 来年、有明テニスの森で行われるパラリンピック本番会場で、さらに進化した眞田が見られるに違いない。
◆◆◆ NHK番組情報 ◆◆◆

■7月12日(金)11:05〜11:54 「ひるまえ ほっと」
「百獣の王」武井壮さんがパラスポーツを体験、トップアスリートとの真剣勝負に挑みます。今回は2回目となる「車いすテニス」に挑戦! 戦いの結果は……。どうぞお楽しみに!

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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