4歳2強が初激突!安田記念データ展望 高速決着ならアーモンドアイ有利

JRA-VANデータラボ

安田記念1〜3着馬の持ちタイム

表4 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 ヴィクトリアマイルでコースレコード、オークスとダービーではいずれもレースレコードが記録されるなど、現在の東京芝コースは速いタイムが出やすい状態になっている。天候の悪化などがなければ、安田記念でも好タイムの決着となる可能性は高そうだ。

 そこで表4をご覧いただきたい。これは過去10年の安田記念のうち、1分31秒台の勝ちタイムが記録された年の1〜3着馬を抜き出し、各馬の芝1400m、芝1600m、芝1800mの持ちタイムを示したものだ。この持ちタイムは「1着時」か「重賞1、2着時」のみを対象としている。これを見ると、1分31秒台の決着になったときは、芝1400mで1分20秒台、芝1600mで1分32秒台、芝1800mで1分45秒台より速い持ちタイムがあった馬が、好走した15頭中11頭を占めることがわかる。

 持っていなかったのは4頭いて、そのうち13年1着のロードカナロア、17年3着のレッドファルクス、18年3着のスワーヴリチャードの3頭はすでにG1勝利の実績を持っていた。また、出走時点ではG1未勝利だった13年3着のダノンシャークも、翌年のマイルCSを制してG1馬の仲間入りを果たすことになる。

 また、そうしたG1級の馬でも4頭中3頭は3着までにとどまっている点に、高速決着における持ちタイムの重要性が表れているのではないか。そして、それでも勝ち切ったロードカナロアという馬の偉大さに改めて感じ入るところである。

距離延長・同距離・距離短縮別成績

表5 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表5は、前走距離に対して「今回延長」「同距離」「今回短縮」となる馬の成績をそれぞれ示したもので、前走は芝のみに限っている(前走ダートの好走例はなし)。表の上半分は勝ちタイムが1分31秒台になった5年、下半分は1分32秒台以上になった5年に分けているが、実に興味深いデータが出ている。1分31秒台の場合は「今回延長」が4勝を挙げている一方で、1分32秒台以上の場合は「同距離」が4勝をマークと、勝ちタイムによって1着馬の傾向が一変するのである。当日のレース結果から速いタイムが予想されるようなら「今回延長」となる馬、そうでなければ「同距離」を重視すると的中につながりやすいのではないだろうか。

4角通過順別成績

表6 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表6は4角通過順別の成績を示したもので、前項同様に上半分は勝ちタイムが1分31秒台になった5年、下半分は1分32秒台以上になった5年に分けている。1分31秒台のほうから見ていくと、1着が4角7番手以降だった馬に集中しているのに対して、1〜6番手は合わせて【0.2.2.28】と先行馬は苦戦。ところが、1分32秒台以上の決着になると4角1〜6番手だった馬が【4.1.1.25】と勝つケースが多い。まとめると、勝ちタイムが1分31秒台になった場合は差し馬、1分32秒台以上なら先行馬が1着になりやすいようだ。

結論

 今年はかなりの高速決着になることも予想されるが、注目の2頭でより影響が大きいのはダノンプレミアムかもしれない。過去の全レースで4角を4番手以内で回っているように、同馬の脚質は先行でほぼ固定されている。そして、表6の項で見た通り、先行馬にとっては1分31秒台になると苦しく、好走例は1分32秒台以上の場合に多い。また、今回は前走と同距離での出走となるが、表5の項で見た通り、このケースでも1分32秒台以上の場合に良績が残っている。

 一方のアーモンドアイは素晴らしい差し脚を持っているが、オークスやジャパンCでは先行したように自在性もある。今回は久しぶりの芝1600mということから後ろからの競馬になる可能性も高そうで、勝ちタイムが速くなった場合はそのほうが結果も出ている。

 すなわち、この2頭に関して言えば、タイムが速くなりそうならアーモンドアイ、そこまで速くならなければダノンプレミアムに分があるのではないか。当日の馬場やレース結果からどのぐらいのタイムが出そうなのか、しっかり判断して予想に活かしたい。なお、アーモンドアイは過去の最高馬体重が秋華賞時の480キロ。過去10年の安田記念では480キロ以上の馬しか勝っていないだけに、当日馬体重にも一応は注意を払っておきたい。

 もちろん、この2頭以外にも実力馬は多く出走してくる。タイムが速くなった場合は持ちタイムが必須で、前走から距離延長で挑む馬が好成績を収めている。その観点から注目したいのが芝1400mの京王杯SC組。勝ち馬のタワーオブロンドンは1分19秒4のコースレコードを記録しており、今の馬場なら出てくれば有力な存在にも思えたのだが、どうやら回避して函館スプリントSに向かうようだ。

 京王杯SCで敗れた馬のなかでは、3着のロジクライと7着のスマートオーディンに注目してみたい。前者は18年富士S1着時が1分31秒7、後者も19年阪急杯1着時が1分20秒3と、いずれも速い持ちタイムがある。脚質的には先行することも多いロジクライより、差し中心のスマートオーディンのほうが展開は合うかもしれない。

 逆に、1分32秒台以上の決着になりそうなら、前走同距離かつ先行タイプの馬を狙ってみたい。該当するのはアエロリットフィアーノロマーノインディチャンプといったあたりで、穴っぽいところではグァンチャーレの名前も挙げておきたい。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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