CL決勝でトッテナムに求められる「集中力」と「自己制御」
今季のCLは、逆境に次ぐ逆境での戦い
CLで逆境に次ぐ逆境での戦いを制してきたトッテナム。決勝のポイントは? 【写真:ロイター/アフロ】
トッテナムにとっての今季のCLは、逆境に次ぐ逆境での戦いだった。バルセロナとインテルと同じグループBに入った瞬間から望み薄とされた。実際に両チームとの初戦に敗れ、PSVとも引分けに終わった時点では、グループステージ敗退さえ予想された。しかし、主砲ハリー・ケインの2得点で逆転勝利を収めた第4節のPSV戦を皮切りに、リターンマッチでは黒星なし。最終節バルセロナ戦で1ポイントを奪い、際どくグループ2位通過を果たした。
決勝トーナメント1回戦ではボルシア・ドルトムントを無難に退けたが(2戦合計4−0)、続く準々決勝では、相手のマンチェスター・シティから「くじ運に恵まれた」と言われた。しかも、最終的にアウェーゴールが勝敗を分けた2試合は災難続き。ホームでの第1レグでは、ビデオ判定による酷なPKを守護神ウーゴ・ロリスが止め、ソン・フンミンのゴールで先勝を収めたが(1−0)、ケイン、デレ・アリ、ハリー・ウインクスの主力3名がけがでピッチを去った。第2レグ(3−4)では、終了間際の相手ゴールを取り消すオフサイドのビデオ判定に救われたものの、敵地でも2得点でケイン戦線離脱の穴を埋めたソン・フンミンが、警告累積により準決勝第1レグで出場停止となった。
そのアヤックスとの初戦はホームで零封負け(0−1)。第2レグでも、あろうことか前半に2失点。だが、ここでも不屈のチームスピリットが物を言った。合計3点のビハインドで迎えたハーフタイム中、ポチェッティーノは、前夜のバルセロナ戦で3点差から蘇ったリバプールの「奇跡」に言及して奮起を促したという。すると、ケインの代わりに先発したルーカス・モウラがハットトリック(3−2)。アウェーゴールによるトッテナム勝利を意味する土壇場の3点目は、やはり控えFWのフェルナンド・ジョレンテが放ったシュートがきっかけでもあった。
そして、現地時間6月1日にマドリードで開催される“プレミアリーグ・ファイナル”でも、メンタルの力が必要になる。国内での今季リーグ順位からして当然ではあるが、巷ではリバプール優位との見方が強い。リーグ戦で4位のトッテナムと、2位リバプールとの間には、26ポイントもの開きがある。互いに攻撃を身上とするが、リーグでの得点数でも22点差をつけられている。2度の直接対決も、僅差だが相手に軍配が上がった(いずれも2−1)。CLの世界においても、通算6度目の欧州制覇を狙うリバプールは2年連続の決勝進出。トッテナムは、過去4ラウンドと同様に反骨心を見せなければならない。
けが明けのケイン「準備はできている」
「準備はできている」と語るケイン(左)。指揮官の起用法はいかに 【写真:ロイター/アフロ】
ケイン自身は、決勝5日前の時点で「チーム練習もフルにこなしているし、準備はできている」と語り、先発可能をアピール。マッチ・フィットネス不足を危惧する声もあるが、トッテナムでのキャリアにおける過去最大のビッグゲームで体を駆け巡るアドレナリンが、25歳の生え抜きエースにプラスアルファの力を与えてくれることだろう。無論、最終判断を下すのは指揮官だが、故障明けでも、コンディションに問題がなければ先発起用を厭わないのが、「世界最高クラス」とまで評価するセンターFWに対するポチェッティーノのスタンス。自らも初体験となるCL決勝の晴れ舞台に、頭からケインを送り出す決断は想像に難くない。