連載:イチロー取材記 駆け抜けた19年

イチロー引退へ、長い長い一日の始まり 「3.21」ドキュメント

丹羽政善

開幕戦の演出に選手も実況も戸惑った

開幕第1戦、イチローは4回裏で交代。選手たちが集まって出迎えた 【Getty Images】

 ところで、サービス監督の演出は、もちろんイチローも承知してのこと。すでに触れたように第1戦の交代は4回だったが、イニングというより打席数だったそうだ。

「知ってましたよ、2打席って」

 ただ、選手らが集まることまでは知らなかった。

「でもあれ、日本のファンの人にはどうなんだろう。アメリカではよくあるけど、ちょっと戸惑っただろうね。まあ、そりゃあそうでしょうね」

 いやいや、アメリカ人も戸惑った。

「彼が開幕戦の4回裏に交代したとき、これで最後なのかなと思った」とは、レーザービームの名付け親として知られる実況のリック・リーズだ。

「ファンも私と同じことを考えていたと思う」

 巨人との親善試合に先発し、アスレチックス戦では出番のなかったマイク・リークもイチローを出迎えながら戸惑っていた。

「ファンはビックリしただろうね。僕も『どうなっているんだ?』と思ったぐらいだから(笑)」

 状況を知らないわけではなかったが、全部を把握しているわけでもなかった。

「イチローが週末(開幕シリーズが終わった後)に重大発表をするとは知らされていた。でも、次の日も出場すると聞いていたから、『あれ?』となった」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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