1位降着ケンタッキーダービーに賛否両論 米国採用の基準見直しへ議論発展か

JRA-VAN

1位入線馬の降着は史上初、カントリーハウスが繰り上げ優勝

2位入線したカントリーハウス(左)が繰り上がり優勝、1位入線馬の降着は同レース史上初の出来事だった 【Photo by Getty Images】

 3コーナーにかかる1200m通過タイムは1分12秒50。終始緩みのないペースで勝負どころの最終コーナーでアクシデントが起こった。逃げるマキシマムセキュリティが物見でもしたかのようにコーナーで大きく外側に膨れてウォーオブウィルに接触。ウォーオブウィルと、その外を追い上げたカントリーハウスの間に挟まれたロングレンジトディが大きく後退し、このあおりを受けたボーディエクスプレスも被害を受けた。一連のアクシデントの間に内をすくったコードオブオナーが一瞬先頭に立ったが、態勢を立て直したマキシマムセキュリティが、ギアを上げてこれを抜き返す。外からカントリーハウスが追撃したが、マキシマムセキュリティはゴールでこれを1馬身3/4退けて先頭で入線。昨年のジャスティファイに続く不敗のケンタッキーダービー馬が誕生か、と思われたが、カントリーハウスのF.プラ騎手から異議申し立てが成されて落ち着かない時間が過ぎた。

 約20分にわたる審議はマキシマムセキュリティの降着(被害馬ロングレンジトディの次の17着)とカントリーハウスの繰り上がり優勝が決まった。不良馬場でマキシマムセキュリティが計時したタイムは2分03秒93。3着以下もそれぞれ繰り上がって2着にコードオブオナー、3着にタシトゥス、4着インプロバブルで確定。W.モット調教師とプラ騎手はともにケンタッキーダービー初優勝となった。長旅を経て参戦したマスターフェンサーは直線に向いても最後方のままという苦しい競馬だったが、馬群を縫うように最内に潜り込んで残り200mでラチ沿いに伸びて「最後は非常に良い脚を使ってくれました」とJ.ルパルー騎手はコメント。5着したゲームウィナーにアタマ差の6着はラニの9着を上回る日本調教馬の最高着順となった。 

 ケンタッキーダービーの1位入線馬が降着となるのは史上初(1968年のダンサーズイメージはレース後に禁止薬物が検出されて失格)の出来事。3連単の配当(1629万8210円)はJRAが海外馬券発売を始めてからの最高配当となった。

判断の源となったのは米国が採用するカテゴリー2の降着基準

 この降着に関してはレース後から賛否両論が寄せられたが、判断の源となったのは米国が採用するカテゴリー2の降着基準である。日本でも2013年から採用した世界基準のカテゴリー1は「その加害行為がなければ被害馬は加害馬よりも上位になることができた」とみなされた場合のみ降着とされるが、カテゴリー2は「その加害行為が被害馬の競走能力発揮にどれくらい影響を与えたかを見て総合的に判断する」というもの。今回の例に当てはめるとカテゴリー1基準であれば、騎手にペナルティは与えられてもマキシマムセキュリティの降着はなかった可能性が高い。サラブレッドデイリーニュースでは米国が採用しているカテゴリー2についての問題提起をしており、今後国内で降着基準の見直しについて議論されることになるだろう。

マスターフェンサーにも二冠目奪取の可能性

日本産馬として初めて挑戦したマスターフェンサー(右から3頭目)は日本調教馬最高着順の6着と健闘 【Photo by Getty Images】

 枠順や馬場も含め、出走馬の多くはなんらかの不利益を被ったが、厳しい篩(ふるい)にかけられたことによってマスターフェンサーまでの上位7頭にクラシックに届く能力が認められた。残る二冠の勝ち馬はこの中から出るだろう。

(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)

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