デア・クラシカーを控えた両者の諸事情 ブンデスリーガ優勝を占う大一番

中野吉之伴

引き分けでも悪くはないドルトムント

ドルトムントが調子を取り戻している背景には、ビッチェルの復調が大きい 【写真:ロイター/アフロ】

 そんなバイエルン相手にドルトムントはどんなゲームプランで試合に臨むのだろうか。お互いの立ち位置から考えれば引き分けでも悪くはない。勝ち点差をキープすることができれば、優勝に向けて大きな一歩となる。ただ引き分け狙いで試合に入ることはしないだろう。ベルギー代表アクセル・ビッチェルは「ミュンヘンで勝ち点3を取ることが僕らの野望だ。そのために全力で挑む」と言葉に力を込めていた。

 後半戦に入り一時期不調に陥っていたドルトムントだが、ここ最近は少しずつ調子を取り戻している。前節ヴォルフスブルク戦では試合終了間際の2ゴール(90分と94分)で大事な勝利を挙げることができた。ビッチェルの復調が大きい。前半戦から試合に出ずっぱりだったために、1〜2月はらしくない軽率なミスが目立つ試合もあった。しかし負傷離脱を機にうまくコンディションを作り直し、いまではまた中盤で特別な存在感を見せている。特に守備陣に負傷者が多いドルトムントは、中盤で崩されずに持ちこたえることが非常に大切だ。

 不安材料もある。この試合で出場が微妙なのはパコ・アルカセルだ。前述のヴォルフスブルク戦で2得点を挙げ、今季ここまで16得点とレバンドフスキに次ぐ得点ランキング2位につけている。だがヴォルフスブルク戦の後半に腕を負傷し、今週は全体練習に一度も参加できていない。「難しいがまだチャンスはある。前日練習後に決断するよ」とファブレ監督はぎりぎりまで希望を捨てないつもりだ。ドルトムントのチームドクターは特製ギブスを装着すれば出られるのではないかとさまざまな検討をしており、ひょっとしたら途中出場からジョーカーの役割を担うことはできるかもしれない。

 欠場となった場合は、マリオ・ゲッツェがトップの位置に入ることが予想される。今季はようやく調子を取り戻し、特に親友マルコ・ロイスとの息の合ったコンビネーションで攻撃陣をけん引している。ワンタッチで相手の足が届かないところへボールを運ぶ技術と戦術眼はさすがのレベルだ。

 そして今季のドルトムントを語る上で何よりポジティブなのはロイスだろう。リーグ15ゴール6アシストと今季MVP最有力候補の活躍ぶりだ。代表取締役ハンスヨアヒム・バッツケは「生涯ドルトムントでプレー」と語り、チームマネージャーのミヒャエル・ツォルクは「われわれの攻撃陣の中で決定的な仕事をする選手だ」と首脳陣から絶対の信頼を得ている。ヴォルフスブルク戦では第一子の出産のため試合を欠場。子どもも無事に誕生し、心身ともにベストコンディションでバイエルン戦に挑める。ドルトムントでのタイトルを渇望している。DFB杯で優勝はあるが、その決勝戦では負傷での交代を余儀なくされた。だからこそ、この一戦にかける思いは人一倍だろう。

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著者プロフィール

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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