『華麗なる甲子園一族』龍谷大平安・奥村 大胆にホームランにこだわる理由
1回戦で決勝打も、聞いてほしかったのは……
今大会では1回戦で決勝打をマーク。本人は打撃面だけでなく、守備面でも手応えを感じている 【写真は共同】
すると……そこまでの打席は、前佑囲斗の速球に対応しようとバットを短く持っていたが、普段どおりバットを長く持った。そして振り抜くと、左翼ポール際に上がり、もう少しでホームランという先制の二塁打。京都勢の春夏通算200勝をたぐり寄せた一打に、奥村は言う。
「自分には直球で攻めてきていたので、直球一本で狙っていました。ホームランを打つという気持ちで打席に入ったので惜しかったですが、ポール際ではちょっとせこい(笑)。どうせ打つなら左中間か右中間にしたいです」
打席途中に3回、こぶしでたたいた左胸。今年1月、不整脈の手術で心臓にカテーテルを入れた箇所だ。手術を受けなければセンバツ出場は危ぶまれたが、完治した今は、全力でのプレーが可能。十分に積んだ冬の練習で、秋には不安定だった送球が安心して見ていられるようになった。そう指摘すると、「そうなんです。バッティングよりも、守備のことを聞いてほしかった。秋までは、手だけで投げている感じでしたが、トレーニングで体幹が安定し、下半身も強くなり、いまはきちんと足を使って投げられるんです」。
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史上初の大偉業へ、チャンスはまた訪れる
「風が逆だったので、ホームランにはならないかな、と。父の(ホームラン)は映像で、兄のは目の前で見ていますし、やはり1本打ちたいと思います。年末に兄と顔を合わせたときには『俺は甲子園初打席で本塁打を打った』といわれたので、『出場回数では、センバツも出る俺のほうが多い』と答えたんです(笑)。去年の夏は平安100勝を、今回は1回戦で京都200勝を経験しましたから、自分は何かを持っていると思う」
奥村が、2年生ながら大胆にホームランにこだわるのは理由がある。甲子園では過去、兄弟での本塁打は2例あるが、親子・兄弟にまたがってとなると、達成例はない。つまり、もし奥村にホームランが飛び出せば……親子・兄弟本塁打という、史上初めての大偉業になるのだ。
残念ながら明豊との準々決勝では、ホームランは出ずに4打数1安打。
「最悪です。5番が1本しか打てないようでは、流れはきません。打ちたい、打ちたいという気持ちが空回りしました。父の4強も、兄のホームランにも追いついていませんが、ここからは絶対に超えていきたい」
まだ2年生。華麗なる一族には、また偉業達成のチャンスが訪れるだろう。