Jリーグを世界最高のスポーツエンタメに 起業家精神で切り拓くスポーツ界の革新

スポーツビジネスに求められる起業家精神

三木谷氏がスポーツビジネスと向き合う上で大切にしていることはアントレプレナーシップ(起業家精神)だという 【写真:尾関裕士】

――スポーツビジネスに携わって感じる本業とのシナジーは。

三木谷: もちろん大きいですよね。世界からの、楽天が先進的な企業であるというコーポレートイメージは非常に高まっていますし、全てのスポーツにおいて、楽天がグローバルブランドとして認知されつつあることは実感しています。

 また、ヴィッセル神戸と東北楽天ゴールデンイーグルスのホームスタジアムである、ノエビアスタジアム神戸と楽天生命パーク宮城で「完全キャッシュレス化スタジアム」という取り組みにもチャレンジしていますが、これらも手応えを感じています。チケット販売もAIを活用したプライシング、インターネットを活用したファンサービス、マーチャンダイジング……、総合的な体験としてのスポーツだと思いますし、そこに向けて、やれることややるべきことはたくさんあります。

 このようなことについても、グループ内の球団・スタジアムだけではなく、他のチームや施設で横展開可能です。スポーツを通じて、さまざまなビジネスジャンルでの接点や相乗効果が生まれていることを感じています。

――スポーツビジネスと向き合う上で、大切にしていることを教えてください。

三木谷: アントレプレナーシップです。東北楽天ゴールデンイーグルスを設立した時も、プロ野球界全体が非常に苦しい時期でした。その中で、私たちの仲間の起業家精神あふれるさまざまなアイデアと実行力が、野球というスポーツビジネスに革新をもたらしたと思います。結果的に「球団をもちたい」という企業が数多く出てくるようになりました。あの時、もし私たちが参画していなければ、日本のプロ野球界も球団数が減り、他のアジアの国の野球リーグのような規模になっていた可能性もあります。

世界に開かれたプラットフォームに

世界に開かれたプラットフォームの中で、最高のコンテンツとして期待できるスポーツで世界一を目指す想いを語ってくれた 【写真:尾関裕士】

――あらためて、御社の取り組みを通じて、スポーツに大きな投資をする流れができたことに価値があると感じます。

三木谷: 今後、オートメーションやAIがますます発展していくでしょう。その中で、世界最高のコンテンツとして期待できるのがスポーツだと思っています。

 ユベントスのオーナーに話を聞くと、イタリアではGDPの3%がサッカービジネスだと言うんです(笑)。日本でも考え方を変えて、日本人の素晴らしいプレーを観るだけではなく、世界に開かれたプラットフォームになっていくべきだと考えています。そうした想いを具現化するために、私たちがロールモデルとして先陣を切って挑戦しているところです。ただ、私たちだけでもダメ。Jリーグ全体が盛り上がり、売上が増加していかなければ、サステナブル(持続可能)なリーグ運営は成り立ちませんので。

――スポーツ界にどんな未来を期待していますか。

三木谷: スポーツには夢が必要ですよね。スターがたくさん集まるクラブがあるのもいいですし、地域の小さなクラブが力を結集してジャイアントキリングを成し遂げるのもいいと思います。多様性のあるクラブが集まって、リーグ全体として発展していくように魅力を創出していくことが大切だと思います。

 インターネットメディアには、国境も時間的制約もありません。いつ、どこにいても、世界中の情報を手に入れることができる時代になりました。当然ながら、スポーツも日本国内の試合しか観られない環境ではありません。だからこそ、プレミアリーグ、ブンデスリーガ、ラ・リーガを超える世界一のリーグを目指す。日本人だけで楽しむのではなく、そうした世界に開かれたプラットフォームだと考えるべきだと思っています。この共通の目標に向かって、周りのみなさんとコミュニケーションを取っていくつもりです。

 それこそ今、イニエスタ選手が、日本の最大の広告塔ですよね。世界の人々が、日本のスポーツを観てその楽しさを発信し、さまざまな領域で相乗効果を発揮できるようになればいい。そして、こうした共通の問題認識をもち、一緒に勉強しながら未来を創り上げていく仲間が増えていくといいですね。

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著者プロフィール

「日本スポーツビジネス大賞」は、スポーツビジネスにおける素晴らしい取り組みを行い、年間を通して著しい成果を挙げたクラブ・企業・団体等を表彰する企画。こうした事例にスポットライトを当てることで、分野横断的に学び合い、日本のスポーツ界のさらなる発展に貢献することを目的とする。2017年、川淵三郎氏を発起人代表として発足、実行委員会が事務運営を行う。第3回となる2019年度表彰は、過去2回同様、株式会社楽天野球団元社長で株式会社USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長COOの島田亨氏を審査委員長に迎え、スポーツナビの創業者であり現在はヤフー株式会社常務執行役員コーポレートグループ長、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事の本間浩輔氏、株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役、株式会社スポカレ代表取締役、一般社団法人スポーツビジネスアカデミー代表理事の荒木重雄氏、欧州サッカー協会マーケティング代理店「TEAMマーケティング」Head of APAC Sales、Jリーグアドバイザーの岡部恭英氏、と各方面でスポーツビジネス業界をリードする識者が審査委員会を構成し、審査を行った。

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