日本の車いすフェンシングを支える剣士たち 2020へ向けた、それぞれの思い

瀬長あすか

加納が唯一「ライバル」と認める存在

車いすバスケットボールで活躍していた安。2015年から始めたフェンシングでも国内屈指の選手に成長している 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そんな加納が国内で唯一「ライバル」と認める存在が、サーブルを得意とする安だ。3年前、フルーレのみ開催された日本選手権では安が優勝、2年前は加納が3種目中2種目を制しており、安は加納にリードされている。

 安は胸の内をこう明かす。

「加納君は3種目まんべんなく経験を積み、車いすフェンシングの戦い方をつかんできているように感じます。自分のほうはというと、サーブルは光が見えてきているのに対し、フルーレは練習の量や質を高めることが課題。41歳という年齢もあって、とにかく最強と最高を求めていた“あのとき”のように突っ走れない。もう東京までの時間もないし、何かをつかめそうでつかめない今は、すごく苦しいです」

弱点も認識し、さらなる成長を誓う

41歳となった安だが、まだまだ成長できると感じている 【スポーツナビ】

安が言う「あのとき」とは、車いすバスケットボールのスターだった頃のことだ。同競技のパラリンピアンでもある安は、イタリアのプロリーグ・セリエAで活躍するなど第一線で活躍。14年に引退を決断した。それでも、何か世界と戦える障がい者スポーツが見つけられるはずだと、さまざまな競技を体験し、翌15年に車いすフェンシングへの転向を発表した。

「駆け引きが魅力でこの競技を始めましたが、始めた当時と比べると、試合の流れを読む勘のようなものも研ぎ澄まされてきたし、まだ成長できると感じられるのが競技を続ける原動力になっています」

 現在、サーブルの世界ランキングは20位台。昨年末に新しいコーチを加え、障がいゆえ骨盤が立ちにくく出足が遅い自分の弱点も分かってきた。車いすバスケでつくった人脈をフル活用して常に車いすも改良を重ね、ここから上昇気流に乗ろうと必死だ。

 2人に共通するのは、誰にも負けたくないという強い思い。リオデジャネイロパラリンピックでは見られなかった車いすフェンシング日本代表の勇姿が、東京パラリンピックでは見られるはずだ。
◆◆◆ NHK番組情報 ◆◆◆
■3月22日(金)11:05〜11:54
「百獣の王」武井壮さんがパラスポーツを体験、トップアスリートとの真剣勝負に挑みます。今回は2回目となる「車いすフェンシング」に挑戦!戦いの結果は…。どうぞお楽しみに!

2/2ページ

著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント