知られざる富山とバスケの関係 行政編 富山市がビッグゲームをサポートする理由

大島和人

お金に代えられない“シビックプライド”の向上

昨年は、開催地・熊本のPRマスコットキャラクターとしてくまモンが会場を大いに盛り上げていた。こうした取り組みが“シビックプライド”へとつながっていく 【(C)B.LEAGUE】

 オールスターの開催効果は物心両面に及ぶだろう。林崎係長は説明する。

「経済効果は当然あると思います。県外のお客様が来るので、人が動きます。滞在時間が長くなって一泊されることになれば、そういった関連のお金も動きます。飲食もされると思います」

 逆のベクトルもある。彼は強調するのは住民の愛、誇りといった“シビックプライド(都市に対する誇りや愛着を示す言葉)”の側面だ。

「(オールスターゲームを開催することで)シビックプライドが上がってくる。こういった大きな大会が来て、多くの市民方に喜んでもらえるという、お金には代えられない高い価値がすごくあると思います。先に開催された日本代表戦も大盛り上がりでしたが、オールスターも各クラブから人気のある選手が集まり、地元のスターも出ます。そういったところに皆さんにお気づきになっていただけければ、『富山での開催はすごいことなんだよ』『自信をもっていきましょう』という話にもつながります」

 林崎係長は富山をこのような言葉で売り込む。

「富山って、ポテンシャルが高いなと勝手に思っています。生活しやすい都市ですし、東京とのアクセス面も新幹線がつながって良くなった。公共交通を中心とした街づくりをしているという中で、満足度が上がっている。ぶらぶらと歩いて、それで楽しめる。富山市の中心街はそういう魅力があります。環水公園もそうですし、立山連峰の景観があって、ビジュアル的にもきれいなところです。自然が豊かなところもPRできる一つで、立山黒部アルペンルートもありますし。世界が誇る雪稜も公共交通を使って行けます」

 富岩運河環水公園は富山市総合体育館と隣接した場所にある、運河の“船溜まり”を活かした水辺の公園。スターバックスの富山環水公園店では、コーヒーを飲みながら水辺に飛来する鳥を楽しめる。富山の自然、景観は素直に素晴らしい。林崎係長の言葉は「実行」が伴っていて、彼はこのインタビューの直前に、立山連峰の写真を撮影してきていた。

「食」も外せない富山の楽しみ方

林崎係長が撮影してきてくれた立山連峰の写真。富山はさまざまな面で高いポテンシャルを秘めている 【写真提供:林崎幸久】

 林崎係長は富山の「推し」についてこう述べる。

「もう一つ言えば、ベタですけれど食ですね。冬場は海産物が特においしいですね。ブリやカニもそうですが、富山の食はポテンシャルが高いと思います」

 昨年末の日本代表戦では富山駅構内の回転寿司店にバスケ関係者、ファンが集結していたが、おそらく皆が満足をして店を出ただろう。東京で同じものを食べようとすれば2倍3倍の金額を払わなければいけないはずだ。筆者の「取材」を振り返っても、富山の海産物はやはり美味しい。ます寿司、ぶり寿司、日本酒、かまぼこなど土産物も豊富だ。

 県外の人が富山の魅力を知り、県民・市民もそれを再認識する。今回のオールスター戦がそのようなきっかけになることを期待したい。

<次回へつづく。1月18日(金)掲載予定>

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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