視線で「ノックアウト」した坂本花織 全日本女王を手繰り寄せた最後のパーツ
盟友・三原の好調ぶりにも刺激
自らと同じく、中野コーチから指導を受ける三原(写真右)からも刺激を受けたという 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
日本女子の現状という観点から見ると、ショート・フリーともに2位だった坂本が優勝したことは、トップ選手の実力が伯仲していることを示しているともいえる。ショート終了後に坂本は、今回惜しくもメダルには届かなかったものの、総合4位と健闘した三原舞依(シスメックス)の好調ぶりが刺激になったと話している。
「練習から舞依ちゃんがすごく調子良くて、だんだん自分の出来が不安になってきて、そのまま離されてしまいそうな気がしたので、これはまずいと」
全日本4連覇中だった宮原、今シーズン快進撃を続ける紀平を破っての優勝。今大会を坂本が制したことで、日本女子フィギュア界にも変化が生じている 【写真:坂本清】
「梨花ちゃんも知子ちゃんも本当に自分より努力しているし、自分もそれに負けていられない、と思って練習もしているんですけど、ジャンプの質や表現力は、まだまだ二人にはかなわない。今回の演技をもう一度見直して、来年の世界選手権で今回よりいい演技ができるように、日々ブラッシュアップして頑張っていきたいなと思っています」
坂本は、中野コーチの下で毎日一緒に練習している三原と、共にグランプリファイナルに出場した宮原・紀平から刺激を受けることで自らを高め、その結果全日本選手権で頂点に立った。
昨季まで全日本選手権を4連覇していた宮原が今回3位となり、坂本が新女王となったことで、日本女子は絶対的なエースが率いるのではなく、トップ集団が引っ張っていくかたちに変化していく予感も漂う。全日本選手権と同時期に国内選手権が行われたロシアの女子は、ジュニア・シニアともにたくさんの力のある選手がひしめき合っている状態で、それこそが強さの秘訣でもある。
選手たちの実力が伯仲し、試合ごとに順位が入れ替わる今の日本女子は、それぞれの成長を促すには最高の状態にあるのかもしれない。