前ヤクルト・大松が現役にこだわる理由「やっぱ野球が好きなんやなあ」
現役続行に向けて準備中
大松は2019年も現役続行を目指す 【写真は共同】
「今は(ヤクルトの施設がある)戸田で練習できているので、いつ声がかかってもいいように、毎日準備はしてます。いい方向に行くように、しっかりと汗を流している感じですね」
大松は金沢高、東海大を経て、2004年のドラフトで千葉ロッテから5巡目指名を受けてプロ入り。08年に24本塁打、翌09年は19本塁打を放つなど主軸として活躍し、ロッテがリーグ3位から「史上最大の下剋上」で日本一になった10年の日本シリーズでは、第1戦で先制二塁打も打った。
ところが16年シーズン、ファームの試合中に右アキレス腱断裂の重傷を負うと、復帰を目指してリハビリに励んでいる最中に戦力外となって退団。今回は自身にとって2度目の戦力外通告になるが、その受け止め方には大きな違いがあった。
一番の思い出は「ヤクルトでの初打席」
昨春のキャンプでテストを受けて入団したヤクルトでは、長期の欠場もなく思い切り野球ができた。それも現役続行をあきらめず、ヤクルトに拾われたがゆえのこと。だからこそ、戦力外を告げられて真っ先に出たのは「ありがとうございました」の言葉だったという。
「それが第一声でしたね。僕にとっては未知の世界というか、あれだけの大ケガ(右アキレス腱断裂)をした中で、自分でもまだできる! と信じながら、拾ってもらった2年間だったので。セ・リーグという、全く違う舞台で野球ができて本当に幸せでしたし、感謝しかないです」
昨年は真中満前監督によって主に左の代打の切り札として起用され、プロ野球史上4人目となるシーズン2本の代打サヨナラ本塁打を放った。だが、ヤクルトで過ごした2年間で一番の思い出は、その2本のホームランのどちらでもないという。
「サヨナラホームランもいい思い出ですけど、やっぱり一番はヤクルトに来て初めて打席に立った時ですかね。武者震いというか、緊張とかじゃなくてもうワクワクして打席に立てるっていう……。34歳(当時)でそういう思いができるっていうことに、素直にそういう道(現役続行)を選択して良かったって思えた瞬間なんですよね」
シーズンを通して1軍に帯同した昨年は、神宮での試合後は常にベンチ裏に残って素振りを行った。その姿を見て、一緒になってバットを振り始めた西浦直亨は、今年は正遊撃手として自己最多の138試合に出場。「試合後の素振り」は、今年は首脳陣によって日課として若手に課され、試合後のベンチ裏には選手がひしめき合うようになった。
しかし、その輪に大松が加わることはなかった。今年はファームで、プロ2年目以降では最多の78試合に出場し、成績は打率2割2分7厘、3本塁打。最後まで1軍に呼ばれることはなく、昨年とは打って変わってAクラス争いを続けていたチームの雰囲気を感じてみたいという願いは、かなうことはなかった……。
「心残りがあるとすればそこですね。今年は青木(宣親)さんも入って、ケガ人も少なかったとかいろんな要因が考えられるにせよ、間違いなくいい雰囲気とかいい空気にはなっていたと思うんですよ。どれくらい(去年と)変わったのかというところを肌で感じたかったなというのがね」
心残りはそれだけではない。今まで応援してくれたファンに、今年は一度も1軍でプレーする姿を見せることができなかったという思いもある。
「ファンの方のことを思えば、今年は1軍の舞台に立つ姿を見せられなかった悔しさもあります。これだけ応援してくれるファンの方がいるのは、選手として幸せなことですし、そういうファンの方のためにもどこかで元気にプレーしている姿を見せられるようにというのも、モチベーションにしていければと思います」