1年目から結果が求められる与田新監督 どんな現状でも“優勝”の二文字を

ベースボール・タイムズ

一度だけ直撃経験、感じた真摯さ

今シーズン復活を遂げた松坂(写真左)とは第2回WBCで同じユニホームを着たこともあった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2013年の7月。筆者は一度、WBCで2度目の代表コーチを経た解説者時代の与田新監督に話を聞かせてもらったことがある。ナゴヤドームで解説の仕事を終え、帰宅の途につこうとしている時のこと。質問の内容は、「WBCの招集キャンプでは不調に終わり本選メンバーから外れた山井大介投手が、シーズンに入るとノーヒットノーランを達成するほどの好調ぶり。その要因は?」だった。

 事前のアポもなければ、全くの初対面。名刺を渡すのも初めてだった筆者の行動は、今でも失礼極まりなかったと反省している。ところが、突然の問いかけにも嫌な顔一つ見せることなく、解説者・与田氏は足を止めて正対し真摯に答えていただいた。

「(代表合宿に参加していた)当時、WBCの使用球を操れないというのが全ての源で、最終的にコントロールできないというのが、(代表から落選した)一番の原因でした。滑りやすいと言われている球だったので、山井投手にはどうしても合わず難しかったんだと思います。投球フォームも滑らないように投げないといけないので、怖々と投げていましたから。日本の公式球に変わり、握っている感覚が怖くなければ、他のところもしっかり強く使えることで力感も変わってきます。意識としても変わったのではないかなと思っています」

 その他の質問にも1つ1つ丁寧に応えていただくと、最後には「また、いつでも聞きに来てくださいね」と温かい言葉までいただいたことに恐縮するばかりだった。

愛されるだけでなく、勝てる監督に

 誠実な人柄の与田新監督はきっとファンの心をつかむに違いない。ただし、その求心力もチームの成績が伴わなければ長くは続かない。事実として森繁和前監督が惜しみないファンサービスとチームへの献身的な愛情で人気を得ながら、低迷の脱却はかなわなかったことが、任を解かれた最たる理由となった。一部報道では3年契約とされているが、1年目、2年目の状況次第で変わってしまうことは谷繁元信元監督(14〜16年シーズン途中)の前例を見ても明らかだ。

 だからこそ、与田新監督は就任1年目から結果で示す必要がある。前に述べた大型トレードもしかり、風当たりが強くなりそうな大胆なチーム改革も、チームを強くするという信念の下であれば、非情も理解を得ることができる。それは生え抜き監督ならではの特権でもあるだろう。

「やっぱりプロ野球は仕事ですから、責任もあります。戦いの中で勝っていかないと、仕事は果たせない。そういうところを(選手には)再認識してもらいたい」

 就任会見を迎えたこの日、唯一厳しさを込めた言葉だった。与田新監督は愛されるだけでなく、勝てる監督だと信じている。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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