東京V対徳島は、戦術的駆け引きの応酬に 2人のスペイン人指揮官の采配に注目

小澤一郎

国外で手腕を発揮し始めた若く優秀な監督たち

神戸のリージョ監督は「グアルディオラの師匠」として知られている 【(C)J.LEAGUE】

 徳島のロドリゲス監督も参加したUEFAプロライセンスの更新手続きに合わせた指導者養成コースが10月8、9日にスペイン、マドリードで開催された。そこに600人以上のUEFAプロライセンス保有者が集まったように、スペインでは指導者ライセンス受講のためのハードルを下げ、元選手としてのキャリアや特権が幅を利かせていた監督業の門戸を大きく開いた。

 元デポルティーボ・ラ・コルーニャの監督としてラ・リーガの優勝も経験しているハビエル・イルレタ氏も「昔は指導者ライセンスを受講すること自体が難しかった。年40名ほどの枠しかなかったので、セレクションで落とされる人が多かった」と話す。

 プロの指導者ライセンス保有者が増えたことで競争は激しくなったが、必然的に若く優秀な指導者がコンスタントに輩出されるようになり、そうした監督は国内でチャンスがなければ国外へ出ていくようになる。2010年前後を境に「スペインサッカー」のブランドが確立し、指導者の輸出も進むようになった。徳島のロドリゲス監督もその流れに乗って、国内以上に国外でその手腕、実力を示したスペイン人指導者だ。

 UEFAプロライセンスの更新イベントでは国外で活躍するアーセナル監督のウナイ・エメリ、トッテナム監督のマウリシオ・ポチェッティーノ監督(※アルゼンチン人ながらスペインで指導者ライセンスを取得)、中国で指揮を執るグレゴリオ・マンサーノ、ルイス・ガルシアといった監督たちが登壇していた。国外でスペイン人監督が評価される理由について、ベティスやプレミアリーグのウェスト・ブロムウィッチで監督経験のあるペペ・メル氏は「スペインサッカーは戦術に長けているし、スペイン人監督は戦略設計に長けている」と説明している。

 世界的にスペイン人監督の評価と抜てきが進む中で、昨季からようやくJリーグにも輸入されるようになってきたスペイン人指揮官。ジェフユナイテッド千葉のフアン・エスナイデル監督(※アルゼンチン人)、そして今季はヴィッセル神戸に「ジョゼップ・グアルディオラの師匠」として名高いフアン・マヌエル・リージョ監督が就任したことも忘れてはいけないが、スペイン人監督のポテンシャルと戦術レベルの高さを確認できる試合として、ロティーナ監督とロドリゲス監督の対決たる東京Vと徳島の対戦は、これ以上ないカードと断言できる。

 両指揮官による戦術的駆け引きの応酬を肌で体感するためにも、できればスタジアムに足を運んでもらいたい。

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会人経験を経て渡西。2010年までバレンシアで5年間活動。2024年6月からは家族で再びスペインに移住。日本とスペインで育成年代の指導経験あり。現在は、U-NEXTの専属解説者としてLALIGAの解説や関連番組の出演などもこなす。著書19冊(訳構成書含む)、新刊に「スペインで『上手い選手』が育つワケ」(ぱる出版)、「サッカー戦術の教科書」(マイナビ出版)。二児の父・パパコーチ。YouTube「Periodista」チャンネル。(株)アレナトーレ所属。

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