データが語るアーモンドアイ唯一の不安 過去10年ぶっつけで連対した馬はゼロ

JRA-VANデータラボ

前走クラス別成績

表5 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表5は前走クラス別成績。表では下からになるが、格上のクラスから見ていこう。G1の10頭はすべてオークス以来の出走で、3着以内どころか掲示板(5着)に入った馬すらいない。約5カ月ぶりでの出走で、出走間隔が開くと苦戦というのは前項で見た通りである。主流となっているのはローズSを中心とするG2、紫苑Sを中心とするG3で、これも前項で述べた通り。オープン特別の大半は重賞昇格前の紫苑S(15年まで)で、14年1着のショウナンパンドラ以外はすべて4着以下と、当時は大苦戦していた。前走条件戦からも好走例があり、1600万下は2頭中1頭が3着に入っており、なかなか侮れない。前走1000万下および500万下から好走した2頭は、前走で2着に0秒2以上の差で1着だった点で共通。明確なタイム差をつけて勝ってきた馬ならチャンスがあるかもしれない。

前走レース別成績(好走例のあるレースのみ)

表6 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表6は前走レース別成績。出走例、好走例とも圧倒的なローズSについては、次項で別に見ていく。注目は紫苑S。前項で少し触れた通り、15年までのオープン特別時代と、16年以降のG3昇格後では成績が激変しているのだ。16年は紫苑S2着のヴィブロスが本番を制し、同5着だったパールコードが2着。昨年はディアドラが両レースを連勝した。これら3頭に共通する「紫苑Sで3番人気以内かつ5着以内」に該当する馬がいれば注目してみたい。また、古馬相手のクイーンSを使ってきた馬の好走率も高いのだが、注意すべき点がある。好走例の2頭は10年と11年で、当時は秋華賞まで中8週だった。しかし、中10週に開いた12年以降は、12年3番人気6着のアイムユアーズ、昨年1番人気7着のアエロリットなど、人気を裏切るケースが目立つのである。そのほか、札幌記念やムーンライトHなど、秋華賞と同じ右回りの2000mの古馬混合戦を使っていた馬にも好走例がある。異色のローテでは、ダートのシリウスSも右回りの2000mで古馬混合戦という点では共通する。該当する馬がいれば注目してみる価値がありそうだ。

前走ローズS出走馬の各種データ

表7 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表7は、前走ローズS出走馬の着順別成績と人気別成績を示したもの。まず、ローズS1着馬は9頭が出走し、勝ったのは12年のジェンティルドンナ1頭のみ。3着以内に入る確率は決して低くないが、両レースを連勝した馬がこの歴史的名牝しかいないという事実は重く見る必要があるのではないか。なお、秋華賞で3着以内を確保できなかったローズS1着馬に多いのが「ローズSが道悪、秋華賞が良馬場(またはその逆)」だった場合。今年はローズSが良馬場だったので、道悪になれば一考の余地がある。以下、基本的にはローズSで3着以内には入っておきたいところだが、ローズ4着以下から好走した馬も6頭いる。これら巻き返した馬に共通するのは、オークスの着順が9着以内で、重賞もしくはオープン特別で1着の実績を持っていたことだ。前走人気のほうを見ると、ローズSで1番人気馬だった馬が4勝を挙げている。特に「ローズS1番人気で2〜4着」だった馬は【3.0.0.1】と高確率で本番を制しているのだが、今年は該当する馬がいない。

同年春二冠の着順別成績

表8 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 最後に、同年春の桜花賞とオークスでどのような成績を残していたかについて調べたのが表8。こうして見ると、1600mの桜花賞より、2400mのオークスのほうが直結する傾向が強いことは歴然。特にオークス1、2着馬の好走率は高く、無事に出てくれば基本的には有力な存在となる。加えて、オークスで10着以下に敗れている馬がかなり苦しいことも見てとれる。

 また、桜花賞とオークスの両方で3着以内に入っていた馬はさすがに好走率が高い。しかし、両方に出走していずれも6着以下だった馬の好走例はなし。三冠すべてに出走すること自体が素晴らしいことではあるのだが、こうした馬よりも春二冠に出走していない上がり馬を狙ったほうがよさそうだ。

結論

 まずはアーモンドアイ。表8で確認した通り、桜花賞とオークスでいずれも1〜3着に入った馬の好走率は非常に高い。桜花賞では後方からの競馬になったが、オークスでは中団の前目から桜花賞と同じ33秒2の末脚を披露しており、脚質的にもちょうどいい。

 同じことは、こちらもオークス以来の出走となる桜花賞2着、オークス3着のラッキーライラックにもいえる。両馬ともに体調十分であれば、中9週以上は【0.0.0.20】というデータを覆しても驚きはない。ただし、それでも能力を過信することなく、凡走する可能性があることも踏まえて買い目を選ぶべきではないか。

 続いてローズS組。勝ったのはカンタービレだが、4角先頭の逃げに近い競馬だったのは気にかかる。また、オークスでは13着に敗れており、これも秋華賞では結果を出していないパターンに合致している。ならば中団からの競馬で2着に入ったサラキアや3着のラテュロスのほうが狙いやすいのではないか。4着以下からの巻き返しに期待するなら、オークス9着かつオープン特別の忘れな草賞勝ちのあるオールフォーラヴとしたい。

 重賞昇格後に注目度を一気に高めた紫苑S組だが、今年は1、2着馬がいずれも出走を回避。これにより、表6の項で挙げた「3番人気以内かつ5着以内」を満たす馬がいなくなってしまった。強いて挙げるならば、差して4着に入ったパイオニアバイオか。

 これら以外では、古馬重賞の関屋記念を勝ってきたプリモシーンも侮れない実力を持つ1頭。差しの脚質もよく、出走間隔も中8週とクリアした。条件戦組では2000mのレースを勝ってきた馬がいればというところだが、該当するオスカールビーは前走が逃げ、ダンサールも4角先頭。また、1000万下で0秒6差をつけて圧勝してきたミッキーチャームも、前走の脚質は逃げ。今年、条件戦を勝ってきた組はいずれもデータ的に不利な脚質となっており、好走するためには展開の助けが必要になりそうだ。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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