選手も指揮官も自負する「速い」バスケ HCに聞く、○○はうちがNo.1 福岡編

鈴木栄一

驚異の2シーズン連続昇格でB1に参戦

Bリーグ創設時はB3にいた福岡。そこから最速でB1に駆け上がった 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグ開幕時、ライジングゼファー福岡は3部に相当するB3にいたが、そこから2年連続で昇格を果たし、最短でB1の舞台にたどり着いた。このステップアップは驚異的であるが、一方でチームの軸となる山下泰弘、小林大祐の両ガードは福岡の前は川崎ブレイブサンダース、栃木ブレックスから福岡にやってきた選手で、B1でプレーしていてもおかしくない実力者。このように戦力面でいうと、順当なB1昇格と言える側面もあるだろう。

 しかし、B1の舞台となると、過去2シーズンのようにタレント力で優位に立つことは困難になる。そんな中、まずはB1への定着に向け、昨季から指揮を執る河合竜児ヘッドコーチ(HC)は、次のように福岡の志向するスタイルについて語る。

「自分が引き続き指揮を執るので、B2を戦った昨季のバスケットボールをベースに、新しいメンバーがもたらしてくれるものを積み上げていけたらと思います。

 B2の中でしたが、福岡のバスケは『速い』と選手も私も自負していました。その走るバスケットボールが、B1でどこまで通用するか、継続していく。また、昨季と違う部分としてはデクスター・ピットマンの加入でインサイドがより強力となりました。彼のところでアドバンテージを取っていきたいです」

 そして、B1の舞台においても「速い」バスケを展開するためには、「いかにリバウンドを取れるか。リバウンドを取れないと走ることはできません。身体能力、サイズがB2とは違うB1の中で、ボックスアウト、ルーズボールに飛び込むなど、基礎的なことをいかに泥臭く頑張れるかが、より大事になってきます」と言う。

「日本人プレーヤーでいかに点を取れるか」

 昨季、B2からB1に降格したチームは島根スサノオマジック、西宮ストークスと、いずれも前年の昇格チームだった。河合HCは、B1残留に向けたカギをこう見ている。

「昨季、降格してしまったチームを見ると、例えば失点を抑えることができても、得点を取れずにロースコアの戦いで敗れてしまっていた。失点を抑えるのはもちろんですが、さらに日本人プレーヤーでいかに点を取れるか。1人、2人の特定の選手ではなく、日本人がバランスよくどこまで点数を取れるのかが大事になってきます」

 その日本人選手の底上げを担うのが新戦力だ。城宝匡史、波多野和也はともに36歳で、初年度からB1でプレーするなど数々の修羅場を経験している百戦錬磨のベテランで、指揮官も頼りにしている。

「チームとしては全くの未知の世界であるB1に、B2しか知らない選手だけで入ったら面食らうところもあるでしょう。B1を経験しているベテランがいることで、B2から上がった中でも落ち着いたバスケットができると思います。また、城宝は富山(グラウジーズ)、新潟(アルビレックスBB)で、序盤の苦しい状況からチームが立ち直り、残留した経験を持っています。波多野にしても昨季、B1でずっと先発を務めていた実績は心強いですね」

 また、若手としてチームに活力を加えて欲しいのが22歳の津山尚大だ。福岡大学附属大濠高校で活躍した彼は、福岡のバスケファンにはお馴染みの存在であるが、「まずは、安定したディフェンス力を発揮してもらいたいです。オフェンスに関してはポイントガードに挑戦するシーズンとなります」と、新たに司令塔として起用する意向だ。

バスケ王国の福岡で、少年たちが憧れるチームに

 2年連続昇格が示すように、この2シーズン、福岡は多くの白星を積み重ねてきた。しかし、B1でいきなり同じように勝てるかといえば、それは苦しいだろう。だからこそ、指揮官はしっかり現実を見据えている。

「今年はまず、西地区で3番になれたら、というのが目標です。勝つ時もあれば負ける時もある。そして、負け続けることだってあるかもしれません。今までと違う現実が待っていると思います。だからこそ、下を向いていても始まらない。苦しい状況になっても、どう前を見据えて、チームとして一緒に戦っていけるかですね」

 福岡は、高校では福岡大大濠、福岡第一が強豪として知られ、現在、オーストラリアリーグのブリスベン・ブレッツに所属する日本代表の比江島慎ら、多くの名選手を輩出している「バスケどころ」の土地である。だからこそ、河合HCは「バスケ王国の福岡で、自分たちがB1に定着することで、福岡の子供たちに将来、ライジングゼファーでプレーしたいと思ってもらえるクラブにならないといけない」と力強く言う。

 地元のバスケ少年が憧れるチームに――。その第一歩として、まずはB1残留を何としても達成したい福岡だ。

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著者プロフィール

1977年、山梨県生まれ。アメリカ・オレゴン大学ジャーナリズム学部在学中に「NBA新世紀」(ベースボールマガジン社)でライター活動を開始し、現在に到る。毎年、秋から冬にかけて母校オレゴン・ダックスの成績に一喜一憂している。

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