少数精鋭で「愚直」に成長。目指すは勝利 HCに聞く、○○はうちがNo.1 香川編
今季も粘り強い守備が戦術のベースに
新加入のテレンス・ウッドベリー(左)は、衛藤HCと2チーム目となる 【(C)B.LEAGUE】
「でも、そりゃそう。何よりもう、負けたくないですから」
衛藤HCが就任した昨シーズンは「勝率5割」を掲げながら22勝38敗。2シーズン連続となる西地区5位に終わった。「相当の負けず嫌い」を自認する35歳の指揮官にとっては、耐え難い屈辱だったはずだ。「リーグを盛り上げる、面白い存在になっていきたい」。8月の新体制発表会見で、そう抱負を述べた衛藤HC。ひょうひょうとした表情と口調。だがそこにも、勝利を渇望する「怒り」にも似た感情が透けて見えた。低迷するチームが負けていてリーグを面白くできるはずがない、何としても勝つんだ――と。
指揮を執る衛藤HCの「熱」は、愚直な選手たちの守備力を最も鍛え上げてきた。「ゴール下で手を抜かず、セカンド、ルーズボール争いも絶対負けない。力のないチームは守備の粘りが不可欠。チームづくりも戦い方も、そこからビルドアップしてきた」。結果、昨シーズン総失点はB2の18チームで6番目に少ない4523点。選手の鍛錬に加えて、衛藤HC自身の情報収集・分析力もあり、勝敗数と比べてもできすぎと言える数字を残した。
今シーズンも、その粘り強い守備が戦術のベースになる。選手は衛藤HCの熱い薫陶を受けた8人が残った。新加入組はいずれも体の当たりが強いフォワード、前鹿児島レブナイズ(B3)の高比良寛治と、衛藤HCとは2チーム目となる前熊本ヴォルターズのテレンス・ウッドベリー。合計11人の「少数精鋭」。激戦を続けていくにはぎりぎりの選手層とも取れるが、衛藤HCは「まず守備という戦い方が浸透しており、理解度の高い選手も複数いる。新顔を含めて、コンビネーションが向上した上での『化学反応』も楽しみ」と強調、「盾」の進化に期待を寄せる。
アーリーカップで見せた反発力の片鱗
一方、新シーズンに向けた大きな課題は攻撃力アップ。昨シーズン総得点はB2ワースト3位の4272点。全クオーターで外国人枠が2となる新ルールの下、ウォーレン、ウッドベリーのフル稼働は厳しく、2人に頼りっ放しでは攻撃の幅が狭まる。「堅守の上に日本人選手を中心とした攻撃力を積んでいく作業中」と衛藤HC。速攻やドライブから決め切る力、攻守の素早い切り替え、ハードワークを続けるスタミナ。それらの遂行能力を上げるための錬磨を重ねる。
主力を抑えられたり、負傷者が続出したりとチームが窮する場面での反発力も課題だろう。昨シーズンはその力が弱く、終盤の4月にクラブ最悪の9連敗(bj時代除く)を記録した。ただ、9月のアーリーカップ西日本地区では複数選手の負傷欠場がありながら、B2降格の島根スサノオマジックやB1昇格のライジングゼファー福岡、西地区上位の熊本と拮抗(きっこう)した試合を展開。4位に終わったものの、反発力の片りんを見せた。
愚直に、着実に、成長するアローズ。ただ、その中心にいる衛藤HCや選手だけが戦うのではない。チームが今シーズン打ち出したスローガン「PIERCE AS ONE(全員で突破する)」は、スタッフや運営会社、ブースターらも戦力だと訴える。目指すは勝利のみ。3シーズン目の躍進に向け、一丸の“矢”が放たれる。