U18侍、いつもの課題を残して解散 韓国・台湾は野球脳の成長を証明

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国際試合で湿りがちな侍打線

台湾戦では先発ワンにまさかの102球完投を許した 【Koji Watanabe - SAMURAI JAPAN】

 過去、トップチームも含めて国際大会で日本が負けるときは打線が打てないパターンが多い。「審判によってストライクゾーンがばらついていた。大体日本のゾーンより外に広くて、なかなか対応できなかった」(永田監督)と今回も反省材料となった。日ごろの日本のストライクゾーンが染み付き、短期間で修正できなかった。

「ミーティングでは何があっても驚くなとはしつこいほど話した。過去の国際大会の映像も見せていた」と対策は練っていた。しかし、外角に広いゾーンに対して、永田監督は「戸惑いはあった」と振り返る。結果、追い込まれる前に打たなくては、という心理が働き、タイミングが合わずフライを打ち上げてしまう淡白な攻撃が目立った。

 普段使用している金属バットは当たればある程度打球が飛んでいく。金属なら柵越えだったのでは、という打球もしばしば目にした。藤原は「金属だと当てればいいが、木製だと芯に当たらなければ打球が飛ばない。芯に当てることができなかったのは自分のスイングができない技術不足」と口にした。さらに韓国戦、台湾戦は試合が追い詰められていく中で、結果が欲しいあまり、バッティングが縮こまってしまった。

 木製バットへの適応は、現在の高校球界に常についてまわる課題でもある。今後は大学日本代表が12月に選考合宿を行っているように、高校でもある期間代表候補メンバーを集め、木製バットでの練習を経験する合宿があってもいいのではないだろうか。

 審判については、現在侍ジャパンはU12からトップチームまで各カテゴリーが集結していろいろな国際大会へ選手を派遣していることもあり、世代を超えて各国の審判の特徴などを教え合う積極的な情報交換が必要だろう。

 上記二案については、前述のスタッフも「少しでも経験できることは大事なこと。費用の問題はあるが検討は必要。せっかくの侍ジャパンも生かしたい」とのことだった。

「日本のやりたい野球をやられた」

 アジアのライバルと言われている韓国と台湾の成長も大きかった。今大会に照準を合わせて早くから合宿を組んでいたという2チーム。どちらかと言えば、アメリカナイズされてパワーヒッターが多いという印象の韓国だが、難しいボールをカットしたり、追い込まれてからはシャープなスイングで逆方向を狙ってきた。驚いたのは台湾との決勝戦。3対3と延長10回の1死満塁のチャンスに、ピッチャーとファーストの間を狙うドラッグ気味のスクイズを2打者連続で敢行して4点を勝ち越した。

 今までの国際大会では、身体能力が高くても、やや粗さが目立つことが多かった台湾だが、日本戦では1死からバントで走者を得点圏に進めるなど細かい野球を披露した。スモールベースボールは日本の特徴ではあったが、「日本のやりたい野球をやられている」(永田監督)と各国が追随している印象を受けた。

 何よりも2チームとも投手陣のレベルの高さは想定以上だった。韓国は140キロ台の投手を何人もそろえて、日本戦で抑えに上がったソ・ジュンウォンは右横手から最速152キロを投じた。台湾も140キロ台の投手陣を擁していた。日本は左腕ワン・イェンチェンのストレートとスライダーのコンビネーションに交わされたが、打者の裏を欠く頭脳的なリードも光った。

次こそ世界一へ

 来年のW杯での世界一奪還へ向けて、いろいろな課題が山積みとなった。それでも、選手たちは前向きに戦った。中川主将は「勝つために何をするべきか、自分が言わなくても選手個々が自覚と責任を持って動いてくれた」と仲間に感謝を述べた。

 昨年は藤原と小園が2年生ながら代表入り。今年も主力として活躍した。唯一、2年生で選出された奥川恭伸(星稜高2年)は、根尾とキャッチボールをするなどトップレベルを肌で吸収した。「短い期間でいい経験になった。来年また戻れるように頑張りたい」とW杯での世界一を目指す。17名も日ごろと違う野球を体感したことは次のステージへ大きな経験となったはずだ。何人もの選手が「日の丸をつけて今度は世界一を狙いたい」と口にした。

 八田英二・高野連会長は選手たちへ「この解団式が新たな出発となる」とメッセージを送った。選手たちは今後、この悔しさをバネに、大学進学にしろ、社会人にしろ、プロにしろ、次のカテゴリーで活躍し、再びJAPANに戻ってくることを期待したい。

(取材・文:竹内英之/スポーツナビ)

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