乱高下を繰り返すトロロッソ・ホンダ 後半戦の苦境脱出に必要なふたつの鍵

F1速報

倍のポイント稼ぐマクラーレンとの差

第12戦ハンガリーGPではガスリー、ハートレーのふたりがひさしぶりに好調な走りを披露した 【Toro Rosso】

 前半戦は、マシン開発の停滞も苦戦の要因になった。オーストリアGPに投入した新型フロントウイングは、データ上ではダウンフォース増が確認できたにもかかわらず、コーナリング中のバランス変化が過敏で結局最後まで使いこなすことができなかった。パワーユニットもカナダGPにスペック2を投入してからの進歩は乏しく、フェラーリ勢飛躍の鍵となった予選スペシャルモードも未だに実用化できていない。

 その結果、トロロッソの車体はモナコGPから、そしてパワーユニットはカナダGPからほとんど進化がないままシーズン前半戦を終えてしまった。

 ある意味では、トロロッソ・ホンダはマクラーレンと似たような状況にあったと言えるだろう。マクラーレンもスペインGP以降のマシン開発が停滞し、中団グループの中で相対的なポジションをズルズルと下げていった。ホンダとルノーの出力はほぼ同じで、ウイングを立てなければ走れないのも似ていた。

 しかしトロロッソ・ホンダが12戦で5回しか入賞できなかったのに対し、マクラーレンは11回も入賞を果たしてトロロッソ・ホンダの倍近いポイントを稼いでいる(トロロッソ28点、マクラーレン52点)。

 それはマクラーレンがレース戦略も含めて自分たちの能力を最大限に引き出し、結果に繋げてきたからだ。その中で、8回の入賞を果たしているフェルナンド・アロンソのドライビングとレースをまとめ上げる力も大きな役割を果たしていることは揺るぎない事実だ。

 トロロッソ・ホンダは全てが上手くまとまれば中団トップに立てる力があったにもかかわらず、それを安定して発揮することができなかった。それが“アップ&ダウン”の激しさにつながった。常に実力をフルに引き出せていれば、マシンパッケージの特性的に苦手とするサーキットでも、中団トップとまでは言わずとも2台揃ってQ1敗退などということはなかったはずだ。

 ランキング9位のザウバーでさえも、セットアップを見直しマシンバランスが改善した中盤戦以降の安定感ではトロロッソ・ホンダを上回り、入賞回数は8回を数えている。バーレーンとハンガリーという2度の大量得点がなければ、ザウバーに逆転されていてもおかしくなかった。

スペック3投入はシーズン終盤予定

 最高位4位、ランキング8位でシーズン前半戦を終えたトロロッソ・ホンダだが、後半戦はさらなる苦境が待ち受けている。

 後半戦に向けて、ホンダはパワーユニットの開発方針をやや変更し、スペック3の投入はシーズン終盤になる見込みだ。細かなアイテムを夏休み明けに間に合わせるよりも、2019年を睨んでより本格的なものを完成させ、細かな一歩を刻むよりも大きな一歩で2019年に向けた基礎固めをしたいからだ。

 そのためしばらくは現状のパワーのままで戦わねばならず、特に夏休み明けの高速連戦では苦戦を強いられるだろう。だからこそ、できることならば予選スペシャルモードを実戦投入し、手持ちのRA618Hスペック2の実力を最大限まで引き出したいところだ。

 車体側でも、前半戦にセットアップが上手く行かなかった原因をきちんと究明してマシンに対する理解を深め、新型フロントウイングをきちんと機能させて持てるパッケージの性能をフルに引き出せるようにしなければならない。

 サーキット特性やライバルたちとの力関係に左右された結果の“アップ&ダウン”はともかく、自分たちが引き出す実力の“アップ&ダウン”をなくすこと。それがシーズン後半戦のトロロッソ・ホンダに課せられた使命になるだろう。

(テキスト:Mineoki Yoneya)

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