平石代行率いる新生楽天、快進撃の理由 OB山村氏「勝負に徹した結果が形に」

ベースボール・タイムズ

チームに長く携わっているからこそ

2軍でくすぶっていた枡田(写真)の起用など、長年チームに携わっているからこそ、的確な起用ができているという 【写真は共同】

――38歳と若い平石代行ですけど、どんな特徴のある監督だと感じますか?

 真面目ですね。しっかりとした考えがあって、意見を言える。現役時代から苦労してきたということもあって、反骨心もありますし、周りの意見も聞くことができる。そして若いということで、選手たちとの距離が近い。その距離感が、今の時代、今の楽天というチームにすごく合っているように感じますね。選手とコミュニケーションを密に取りながら、『選手ファースト』という考えの中で野球をしている。選手の良いところも悪いところも理解しながら、うまくチームを勝たせていると思います。

――2軍監督を2年間やっていたという経験も大きいと思いますが。

 大きいでしょうね。今季は1軍のヘッドコーチでしたけど、球場で話をしていても僕らの質問に対していろんな面白い答えが返ってくる。その日のゲームの流れをしっかりと読みながら、野球に対してすごく冷静で、いろんなことを考えている。若いですけど、そういう監督の資質、2軍監督時代に培ったものも生かされている。

――チームに長くいますし、それだけ選手のことは分かっている?

 そうですね。枡田(慎太郎)が2軍から上がってきて活躍しているように、それまでくすぶっていた選手を奮起させましたし、青山や久保といったベテランの力もうまく引き出している。外部から新しく戦力を補強するのではなく、それまで持っていたものを戦力にした手腕というのは大いに評価できます。チームに長く携わっていることで選手たちの力を把握できていますし、視野を広く持って采配を振ることができていると思います。

――山村さんとは現役時代も共にプレーしていますが、当時から印象は変わりましたか?

 基本的に変わらないですけど、現役を引退してから育成コーチから2軍のコーチ、1軍コーチ、2軍監督と経験してきて、今季の1軍ヘッドコーチから監督代行と、顔つきがだんだんと変わってきた。今は本当に勝負師の顔になっている。僕から見ても頼もしいですし、選手たちも不安になることはないでしょう。

残り47試合、最後の最後までやり抜け

――梨田監督が辞任したのが6月18日。その時点で21勝41敗1分けの借金20でしたが、平石代行になってからは21勝12敗と白星を先行させて、8月6日時点でCS圏内の3位とは5ゲーム差です。現在の調子ならば十分に逆転可能だと思います。

 3位という目標があることで選手のモチベーションは全然違いますし、平石代行が勝利に徹した戦いをする中で、固定した打順だけでなくゲーム終盤の選手交代なども非常にスムーズです。猛暑の中で選手を休ませるところは休ませるということもできたと思いますし、チームの戦う形、勝つ形というものが7月までに出来上がった。あとは今の戦力の中で、調子を上げてくる選手をうまく使いながら戦っていけばCS進出は近づくと思います。

――残り47試合の中でカギを握る選手、期待したい選手を挙げるとすれば誰になりますか?

 僕は茂木(栄五郎)だと思いますね。昨季(打率2割9分6厘、17本塁打、47打点)みたいなインパクトを、今季(打率2割4分5厘、5本塁打、20打点)は残せていない。リードオフマンの役割も田中(和基)に譲りました。でも力のある選手であることは間違いない。島内(宏明)の状態が良くなってきたので、1番・田中、2番・茂木、3番・島内という上位打線が機能すれば、今以上に得点力は上がるはずです。

――開幕から不振が続いて、ファンも今季は完全に諦めたような感じだったと思います。

 そうですね。チームの話題といったら誰が次の監督になるかだったり、イニエスタ(J1神戸)が球場に来たりってことぐらいでしたけど、今は僕たちOBもしっかりと試合を見るようになりましたから(苦笑)。そういう意味でも今回、ファン心理というものが改めて分かった気がします。やっぱり勝たなきゃだめなんだな、と。いい試合をすることも大事ですけど、やっぱり勝たないとつまらない。

――今後、平石イーグルスに、どんな戦いを期待しますか?

 後半戦の台風の目になっていますし、このままパ・リーグをかき回してもらいたい。もちろん順位争いはありますけど、まずは目の前の1試合に勝つことに全力を尽くして、最後の最後まで今の野球をやり抜いてもらいたいですね。“平石野球”は大いに期待できますし、期待したいと思います。

(取材・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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