竜の剛腕ルーキー・鈴木博志の可能性 指揮官からの助言を体現し、正守護神へ

ベースボール・タイムズ

最速157キロを携え上々のデビュー

鈴木博は7月30日現在、チームトップの43試合登板を記録。4勝11ホールド3セーブの成績を残している 【写真は共同】

 チャンスはいつ、どのような形で訪れるか分からない。そもそも、必ず訪れるとも限らないだろう。ましてやチームでただ一人に託される「クローザー」であるなら尚更のこと。中日のドラフト1巡目ルーキー・鈴木博志は、この特別なポジションへのこだわりと決意をプロ入り前から口にしていた。そして今まさに、その願望を体現できるかどうかの岐路に立っている。

 静岡県掛川市出身の鈴木博は、磐田東高からヤマハを経てプロ入りした。高校3年の秋に右ひじを手術した影響から、社会人1年目に体力強化や投球フォーム固めに時間を費やしたことが奏功。侍ジャパンの社会人代表合宿で自己最速の157キロをマークし、プロでもなかなかお目にかかれない極上の武器を携えた。

 そして、「社会人ナンバーワン右腕」、「特A」の評価が本物であったことを早々に証明する。オープン戦6試合に登板して6イニングを被安打7の無失点。練習試合を含めても1点も許さなかった。

 シーズンに入ってもその安定感は変わらず、開幕カード3戦目(広島戦)でプロ初登板を果たして、1イニングを三者凡退。続く2試合目の登板は4月4日の巨人戦、本拠地・ナゴヤドームで3点リードの8回表にマウンドに上がり、坂本勇人から空振り三振を奪うなど圧巻の3者連続三振でプロ初ホールドを記録した。さらに同21日の広島戦では、初めて塁上に走者を置いた場面を抑えてプロ初勝利。無失点投球を登板9試合目まで続けた。

交流戦でダメージ負うも代役クローザーへ

 セットアッパーとして「8回の男」を任されることになった鈴木博だが、自身の失点がチームの勝敗に大きく関係することを思い知る。

 4月29日の横浜DeNA戦、2点リードの8回表。まさに鈴木博の“持ち場”だったが、先頭打者から2者連続四球を与えてピンチを招くと、長打を浴びて一気に同点。さらに連打を浴びて広がったピンチは味方の好守に助けられて逆転は防げたものの、延長10回に田島慎二が勝ち越しを許してチームは敗れた。初めての失点がチームの敗戦につながってしまい、点を取られない“神通力”は失われていく。

 5月1日と3日の東京ヤクルト戦では、バレンティンから登板2試合続けての被弾。同17日の広島戦では、同点の9回表に鈴木誠也に決勝ソロを浴びて初黒星がついた。極めつけは交流戦初登板となった同30日のオリックス戦。先発・松坂大輔から祖父江大輔へと無失点でつながれた勝利のバトンを大量4失点で派手に落とした。その後は失点を重ねる苦悶の日々が続き、交流戦は8試合のうち6試合で失点。自責点は9を記録し、防御率は4.40まで悪化した。

 リーグ戦が再開してからは5試合連続で無失点。それでも「打ち崩されていた交流戦の時期は不安な気持ちが大きかった。リーグ戦が再開して0点に抑えてはいましたが、不甲斐ないピッチング。認めてもらえるような内容ではなかった」と、手応えを得られなかったのは、交流戦で負ったダメージの大きさを伺わせた。

 そんな状況にも関わらず、悩めるルーキーに大役が回ってくる。首脳陣は不調を極めていた田島に断を下し、“代役”のクローザーに鈴木博を指名。これが好転の兆しをもたらした。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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