【新日本プロレス】王者オメガが唯一無敗で完全優勝へ爆進 実力者が上位に残ったままG1は終盤へ

高木裕美

内藤はNEVER王者・後藤を倒し単独2位に

内藤(右)はNEVER王者の後藤を退け単独2位となる4勝目。オメガを追いかける 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 昨年度覇者の内藤哲也はNEVER無差別級王者・後藤洋央紀に快勝。蝶野正洋(91&92年)、天山広吉(03&04年)に続く史上3人目の2連覇達成に望みを繋いだ。

 G1での戦績は2勝2敗の五分である両者。10年ぶり2度目の優勝を目指す後藤は、内藤のペースには乗らないとばかりに、場外へ出されるやすぐにリングインし、内藤のお得意の挑発ポーズを阻止。内藤にスカされたり、ツバを吐かれても冷静さを失わず、ラリアット、村正、バックドロップとたたみかけると、内藤もドロップキック、水面蹴り、雪崩式フランケンシュタイナー。カウント2。後藤はラリアット、牛殺しから内藤のデスティーノを切り返して裏GTRを放ち、喝を入れてからミドルキック、ヘッドバット。しかし、内藤はデスティーノで流れを引き戻すと、トドメの1発でフィニッシュ。観客の大喝采を浴びた。

 これで内藤は4勝1敗の単独2位に浮上。現在5連勝中で首位を独走するオメガにはすでに7.15大田区での直接対決で敗れているため、オメガが2敗以上しないと優勝決定戦進出は難しい。とはいえ、13年の初優勝時にはリーグ戦を4勝5敗としながら、優勝決定戦に進出するという奇跡を果たしているだけに、まだまだ2連覇の可能性は消えてはいない。一方、後藤は2勝3敗と負け越し。数少ないシングル王者として参加しているだけに、戦績・内容ともに観客をうならせ、ベルトの価値を上げたいところだ。

飯伏は石井との死闘を制し優勝争い踏みとどまる

石井(左)と飯伏が死闘を見せるが、最後は飯伏が勝利 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 飯伏幸太は石井智宏との死闘を制し、優勝争いに踏みとどまった。

 両者は14年5.25横浜アリーナでNEVER無差別級王座を争い、王者・石井が19分22秒、垂直落下式ブレーンバスターで飯伏に勝利し防衛に成功。昨年のG1公式戦となった7.23町田では、飯伏がシットダウン式ラストライドでリベンジしている。

 試合開始早々、互いにスパートをかけエルボー合戦。石井は逆水平チョップ&グーパンチでダウンした飯伏の顔面を踏みつける。対する飯伏もプランチャから客席へ連れ出し、床へのパワーボムをウラカンラナで切り返すと、2階バルコニーに上ってケブラーダを敢行。リングに戻し、スワンダイブ式ミサイルキック、ハーフネルソンスープレックス。石井の滞空式雪崩式ブレーンバスターを食らってもすぐさま立ち上がり、ジャーマンスープレックス、オーバーヘッドキック。さらに禁断のやり投げから張り手の応酬へ。石井がノド元へチョップを繰り出せば、飯伏もグーで反撃。石井が掟破りの逆カミゴェからパワーボム、ラリアットで1回転させるも、飯伏はカウント2でしのぎ、お返しとばかりに掟破りの垂直落下式ブレーンバスターからヒザ蹴り、ハイキック。最後は本家カミゴェで試合を制し、互いに血ヘドを吐くほどの打撃戦を制した。

 これで飯伏は3勝2敗と勝ち越し。天王山である最終戦8.11武道館での盟友オメガ戦に向け、優勝争いに希望を繋げた。一方、石井は2勝3敗と黒星先行。とはいえ、毎試合とも全力ファイトでぶつかり合う姿は確実に観客の心をつかんでおり、どんな相手とでも「消化試合」にはさせない、満足度の高い公式戦が最後まで楽しめそうだ。

負傷のジュースは矢野からようやくの1勝目

ジュース(上)は曲者・矢野から勝利しようやくG1初勝利を飾る 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 現IWGP USヘビー級王者のジュース・ロビンソンは矢野通に辛勝し、ようやくG1初勝利を果たした。

 矢野は開始早々、リング下から取り出したテーピングを使ってジュースを場外の鉄柵に拘束。もはや「フェアプレイ」という言葉を忘れたかのように、ジュースの痛めている左腕を容赦なく攻め立てると、はがしたコーナーマットを互いにつかんでチャンバラ合戦。もはや「たたいてかぶってジャンケンポン」状態で、相手を殴ったり、コーナーで頭をガードしたりといった攻防に。さらにジュースがエアプレーンスピンを仕掛けるが、互いに目が回ってしまい、フラフラ状態。矢野はマンハッタンドロップから急所攻撃を狙うが、これはレフェリーが阻止。一方、ジュースも左手のテーピングを自らはぎ取り覚悟を示すと、バックの取り合いからパルプフリクションを炸裂。待望の1勝目を手に入れた。

 これで両者共に1勝4敗と、優勝争いからはすでに圏外。矢野に関しては、観客の「何かやってくれるだろう」という期待値が異様に高く、今後も8.1鹿児島での内藤戦、8.8横浜でのオメガ戦など、大物食いが出る可能性は十分にある。一方、ジュースは左手負傷というハンディがあるとはいえ、シングル王者らしからぬ戦績はふがいないと言われても仕方がないところ。初勝利後はとびっきりの笑顔を見せたジュースが、持ち前の明るさを取り戻し、せめて勝ち越しで終わることができるか。

両軍巻き込む戦いはトンガの反則判定

両軍入り乱れる戦いは、試合に関係ないファレ(左)がリングに上がり、ザック(右)が反則での勝利となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 タマ・トンガvs.ザック・セイバーJr.は、互いのセコンドも巻き込んでの混戦の末、トンガが反則負けとなった。

 まず、ザックがTAKAみちのくの恒例のマイクアピールを受けると、トンガサイドも負けじとタンガ・ロアの長い長い口上で対抗。ザックはサブミッションで早期決着を狙うが、タンガがザックの足を引っ張って阻止すると、今度はTAKAも加勢する。乱戦に巻き込まれ、レフェリーがダウンする間に、タンガがリングに乱入するも、ザックがフロントネックロックに切り返し、さらにトンガのガンスタンが誤爆。ザックはすかさずトンガに飛びつき式三角絞めを決めると、トンガがたまらずタップするが、レフェリーは不在のため、これは無効。最大の勝機を逃したザックだが、心が折れることなく、ガンスタンを切り返してジムブレイクスアームバーで捕獲すると、今度はファレが乱入し、グラネードを炸裂。すかさず反則のゴングが打ち鳴らされた。

 これでザックは3勝2敗。次の8.1鹿児島でのオメガ戦では、得意のサブミッションでオメガの連勝にストップをかけられるのか注目される。一方、トンガは1勝4敗と完全に優勝争いからは脱落。ますます、勝ち星争いから完全に逸脱した反則・乱入・暴行が激しくなっていきそうだ。

2/2ページ

著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント