【DDT】入江がHARASHIMAに初勝利でV3 KO−Dのベルトを保持し海外遠征宣言

高木裕美

KO−D王座防衛に成功した入江(写真は初防衛に成功した時のもの) 【写真:前島康人】

 22日のDDTプロレスリング「ウチコミ!presents Summer Vacation 2018」東京・後楽園ホール大会では、満員となる1026人を動員した。

 メインイベントのKO−D無差別級選手権試合では、王者・入江茂弘が大先輩のHARASHIMAからシングル初勝利を挙げ、3度目の防衛に成功。試合直後に入江軍のサミー・ゲバラが「いつでもどこでも挑戦権」をその場で行使するも、何とかV4に成功。今後は海外で防衛戦を行っていくことを明言した。

 これまで同王座を最多記録となる9度戴冠、通算24度防衛しているHARASHIMAは、DDTのエースとして団体の顔の役割を担ってきた。海外遠征から帰国後、堂々と会社批判を繰り返す入江に敗れはしたものの、その思いはリング上での戦いを通じて、確かに入江の胸にも届いていた。

サミーがどこでも権行使もなんとか退ける

 入江は得意のパワーファイトで攻勢をかけると、15分過ぎ、エプロンの角をめがけてパワーボムを発射。しかし、HARASHIMAもスワンダイブ式フットスタンプ、ブレーンバスター、ダブルニードロップとたたみかける。なおも「行くぞーっ!」と気合を入れたところへ、入江が逆にデスバレーボム、キャノンボール。HARASHIMAがリバースフランケンシュタイナー、ジャンピングハイキックを繰り出すと、入江は中指を突き立てながらダウンする。なおもHARASHIMAはスタンディング式蒼魔刀、水面蹴りから顔面蹴り2連発。入江のビーストボンバーを食らいながらもショートレンジ蒼魔刀、カウンターのスタンド式蒼魔刀と一気呵成に勝負をかけるが、ロープに引っかかった次の瞬間、入江がそのガラ空きの背中にキャノンボールを発射し、さらにキャノンボールドロップ、ビーストボンバー2連発で振り切った。

 試合後、2人は座ったまま向かい合い、互いに言葉をかわすと、入江から右手を差し出し、ガッチリと握手。V3に成功した入江は「このベルトを持って海外に行きます」と海外でのタイトルマッチ開催を宣言。今林久弥アシスタントプロデューサーから「タイトルマッチは会社の許可が必要」とストップがかかるも、入江は聞く耳を持たず。男色ディーノプロデューサーからは「チャンピオンとして実現させるならどうぞ」と許可が出るも、「落としたりしないでしょうね。大丈夫ですか?」と王座陥落の可能性を示唆されると、胸倉をつかんで激高。するとそこへ、第1試合でいつでもどこでも挑戦権を手に入れたサニーが現れ、その場で王座挑戦を訴えたことから、早くもV4戦が行われることになった。
 サミーはまだ日本では無名な存在ながら、海外ではザック・セイバーJr.やコルト“Boom Boom”カバナ、石森太二などから勝利を挙げている実力者。すでに25分超えの激闘を終えたばかりの入江に対し、ゴング直後から猛攻を仕掛けると、場外へ鉄柱超えショルダスルーで投げ捨てられながらも、驚愕の630°スプラッシュを敢行。だが、入江はこの大技をカウント2でクリアすると、スピアー、キャノンボール、ビーストボンバーでフィニッシュ。10分足らずで料理し、ベルトを死守すると、入江軍のメンバーと共に記念撮影に収まった。

 今年は会場の都合上、10月21日の開催となる毎年恒例の東京・両国国技館大会。このままあと3カ月間、入江が王座を死守するのか。それとも、海外で流出してしまうのか。それとも、現在、センダイガールズプロレスリングの里村明衣子とスーパー・ササダンゴ・マシーンが保持するいつでもどこでも挑戦権保持者が、両国大会を前に王座を奪い取るのか。敗れたHARASHIMAも8月開催の「KING OF DDT」へのエントリーが決まったことで、捲土重来を狙っており、両国大会の主役の座争奪戦はますます混沌としそうだ。

遠藤&ポーリー組は短命でKO−Dタッグを失う

 セミファイナルのKO−Dタッグ選手権試合では、マイク・ベイリー&MAO組がDAMNATIONの遠藤哲哉&マッド・ポーリー組を破り新王者組となった。

 遠藤&ポーリー組は、6.26東京・新木場1stRING大会で関本大介&樋口和貞の「関口」から王座を奪取。プロレス界を代表するパワーファイターコンビを倒したことで、長期政権も期待されたが、わずか1カ月足らずの短命に終わった。

 王座初戴冠を目指すベイリーとMAOは序盤から息の合った好連係を披露。一方、遠藤は痛めた左手のダメージから精彩を欠くファイト。15分過ぎにMAOに放ったシューティングスタープレスをかわされて自爆すると、うつ伏せ状態になったところへベイリーがアルティマウェポンを発射。それでも、2人に対しエルボーで向かっていった遠藤だが、合体のみちのくトルネードドライバーを食らい、万事休す。続けざまにMAOのみちのくドライバーIIを食らうと、さらにMAOとベイリーが2人同時にコーナーへ。MAOが遠藤にキャノンボール450°スプラッシュ、ベイリーが場外のポーリーへケブラーダを同時に決め、勝利をつかんだ。

大家、動画再生数105回を巻き返す勝利

 今大会の冠スポンサーが新設したベルトを争う「ウチコミ!無差別級アルティメットチャンピオンシップベルト争奪タッグランブル」では、大家健が初代王者に君臨し、「ウチコミ!」イメージキャラクターの座も死守した。

 全物件仲介手数料無料の賃貸情報サイト「ウチコミ!」では、「大家(おおや)さん対象のサービス」ということから、大家(おおか)をイメージキャラクターに抜擢しCMを製作するも、YouTubeの動画再生数はまさかの105回。そのため、コミッショナーの中野道明さん(美輪明宏さんの実の甥)からは「アンタがチャンピオンにならなかったらこれ(クビ)だよ」とハッパをかけられていた。

 試合は7チーム参加のタッグランブル形式で争われ、大家&伊橋剛太組が勝ち残ると、そこから今度は1対1のシングルマッチに変更。背水の陣の大家は、盟友・伊橋との友情よりも、自身の生き残りを選択。伊橋のジャーマンスープレックス、フロッグスプラッシュをはね返すと、ブレーンバスターからの炎のスピアーで3カウントを奪取。辛くもラストチャンスをモノにした。

“カリスマ”佐々木は大失恋で涙の惜別宣言

“カリスマ”佐々木大輔は、日本人で初めて性同一性障害を公表したプロレスラー・朱崇花(あすか)とのスペシャルシングルマッチに臨むも、試合前に“公開失恋”。「BIG LOVE」を手にすることはできなかった。

 ヒールユニット「DAMNATION」を率いる佐々木のポリシーは「オレたちは、群れない、媚びない、結婚しない」だった(人妻レスラーに横恋慕したことはあり)。だが、朱崇花との出会いで新たな恋に目覚めた佐々木は、この日の試合前に「大事な話がある」と公開プロポーズを試みるも、朱崇花は「カリスマ、本気だと思ってるの? 好きなわけねえじゃん。マジ卍なんですけど」と態度を豹変させ、「好みじゃない。チビだし、ロン毛とか無理だし、19歳にはちょっとオッサン(32歳)すぎる。遊びだから」とダメ出し連発。これまで朱崇花の魅力に舞い上がっていた佐々木も「何がBIG LOVEだ。ぶっ潰してやる」とさすがに目が覚めた。

 朱崇花は長身を生かしたフランケンシュタイナー、ミサイルキック、ジャーマンスープレックス、スーパーキック、チョークスラムなどを繰り出すと、ムーンサルトプレスを狙うが、これは佐々木がヒザ剣山でブロック。佐々木はNOW OR NEVERからダイビングエルボードロップをたたき込むと、カウント2でわざと起き上がらせ、「合言葉は“Fxxk YOU”だ」と惜別宣言をしてから、渾身のクロスオーバー・フェースロックで締め上げた。

 勝利こそ収めた佐々木だが、大失恋のショックは大きく、泣きそうな表情でリングを去った。

ALL

 KO−D6人タッグ新王者組となったALL OUTの竹下幸之介&彰人&勝俣瞬馬組の「遠い親戚」である女子レスラーたちがDDTマット初参戦。ワイルド&アバズレ&清楚な魅力で観客と対戦相手を魅了した。

 ALL OUTは前回6.24後楽園大会で王座初戴冠。7.24「DDTマジ卍」新木場大会では、センダイガールズプロレスリングの里村明衣子&カサンドラ宮城&DASH・チサコ組を挑戦者として迎え撃つことになった。だが、この一戦を前に、高木三四郎が「このままセンダイガールズには勝てない」と、ALL OUTに進言。それぞれの「遠い親戚」である女子選手を連れてくるよう提案した。

 そして組まれた今回の「T2ひー女子プロレスvs.ALL OUT女子プロレス全面対抗戦〜後楽園超旋風!〜」では、すでにおなじみのフランソワーズ☆タカギ&マーガレット★オオワシ&平田一子組に対し、幸之介の母・恵子さんが秘密裏に育てていた女子プロレスラー・竹下恵子ジュニア、ガングロの彰子、清純派のカルーセル・シュンが登場。ALL OUT女子はDA PUMPの「U.S.A.」に乗って、ダサカッコいいダンスを披露するが、パンチパーマに豹柄のTシャツ&スパッツ姿で、アメちゃんを配る恵子ジュニアは、まさに「大阪のオバチャン」そのもの。試合中も豪快なヒップアタックで平田を吹っ飛ばすと、スパッツが脱げるアクシデントに「嫁に行かれへんわ」と恥じらいを見せたかと思いきや、今度は自らTシャツを引きちぎり、ババシャツ&ブラジャー姿のままタカギにビッグブーツ、レッグドロップを発射。見事完勝を収めると、ホーガンばりのポーズで観客にアピールし、大阪のオバチャンの底知れぬパワーを証明してみせた。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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