阪神ドラ1馬場はここぞで力を発揮? 2軍首脳陣、高校先輩が語る右腕の強み

岡本育子

「なりきって自分を出せる人」

6月21日の1軍初登板初先発では6回1失点の好投。馬場(写真中央)はマウンドを降り、柔和な笑顔を浮かべる 【写真は共同】

 仙台大時代、「困ったら力勝負」というタイプだったという馬場が、変化球の精度を上げて「軟投派」と自称するようになったのは4年生の秋。スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットを駆使し、その魅力を存分に発揮した。しかしプロに入って再び“直球”と付き合う日々を迎える。
 
 矢野燿大2軍監督は「変化球を投げたいだろうし、それで十分に抑えられるピッチャーだと思う。ただ、1軍で先発として戦うなら真っすぐが必要。球の強さがほしい」と、変化球を評価しつつ、その先を見据えて注文を出す。高橋建2軍投手コーチも「スピードが出るに越したことはないけど、大切なのは球のキレ。生きた球を投げること。そういうストレートにこだわってほしい」と助言する。

 また高橋コーチは、今回のフレッシュオールスター出場に際して「“らしく”でいいと思います。その場で自分のパフォーマンスが出せる強いタイプだから、ああいう舞台ではやってくれるでしょう。なりきって自分を出せる人ですね。淡路での巨人戦しかり、1軍のデビュー戦しかり」と馬場にエールを送った。

 淡路の巨人戦とは、5月20日に兵庫県淡路市で行われたファーム交流試合。これが馬場にとって公式戦初先発だった。5回を投げ3安打9三振で無失点、2勝目を挙げている。そして1軍のデビュー戦とは、6月21日のオリックス戦。甲子園で迎えたプロ初登板初先発は6回1失点と好投したもの。これらを踏まえ、高橋コーチは「1軍先発陣の一角を狙うピッチャーになってほしい。そう思える器量の持ち主なので」と期待を込める。

 ここぞという場面で力を発揮したことは高校時代もあったらしい。それも試合ではないところで。

 イースタンの1番を打った、仙台育英高の1学年先輩である松原は「結構おとなしかったですね。でもメンバー外の選手で”応援練習”っていうのがあって僕が指導する立場だったんですけど、普段はおとなしいのにメチャクチャ大きな声を出してくれたのを覚えています」と証言。

 さらに「変わっていませんね。おとなしいけど、いつもニコニコしていて。だから馬場が3年生で甲子園に出た時、ビックリしたんですよ!あんな闘志をむき出しにした姿を見たことがなかったんで」という話も。高橋コーチの話と一致する。

2軍ながら“プロ初本塁打”も

 馬場にビックリといえば、7月1日のウエスタン・リーグ、オリックス戦を忘れてはならない。1軍初登板初先発の翌日に登録を抹消され、この日がそれ以来の登板だった。先発した馬場はプロ初打席だった2回にフルスイングで空振り三振。しかし4回の2打席目はK−鈴木が投じた146キロのストレートを豪快な一振りでレフトスタンドへ放り込んだのだ。

 2軍ながらプロ初安打がホームラン! 矢野監督も「あれはすごい!次も打席に立たせたかった」と絶賛する一発だった。あれだけのスイングをするってことはバッティングが好きなはず。「いや〜、残留練習で打っていたので……」と本人も否定はしなかった。本隊が遠征中、鳴尾浜で安藤優也育成コーチと取り組んだ練習の成果に他ならない。

 このホームランのあと1軍練習に合流するも大雨の影響で試合が延期されたこともあり、後半戦のスタートは18日のウエスタン・福岡ソフトバンク戦だった。3回に不運なヒットなどで2点を失うが、6回を被安打4、無四球と好投。4勝目を挙げ、チームの首位陥落を阻止した。ここから再び狙う1軍で今度はどんなパフォーマンスを見せるのか? 苦しい時、迷った時、あの東北の地でもらった大きな拍手と声援が、18番の背中を押してくれるだろう。

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著者プロフィール

兵庫県加古川市出身。プロ野球ナイター中継や、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって30年以上。ウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それから阪神の2軍を取材するようになり、はや20年を超える。

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