ジョコに敗れた錦織が打ち明けた心の内 必ず見つける、攻略のための“何か”
ジョコビッチと芝で初対戦「最も崩すのが難しい選手」
準々決勝でジョコビッチに14敗目を喫した錦織。ベスト4進出はならなかった 【写真:ロイター/アフロ】
12連敗中(不戦敗除く)の相手ではあるものの、2カ月前のローマ・マスターズ(BNLイタリア国際)では第1セットを奪い、勝機をつかむところまで迫った。
錦織はノバク・ジョコビッチ(セルビア)を、常々「最も崩すのが難しい選手」だと称している。彼と対戦する時には「攻めるべきか、じっくりいくべきか」の迷いに襲われ、その“命題への解”はいまだ出ていない。
その意味では、ウィンブルドン準々決勝という今回の戦いの舞台は、攻撃の優位性が高い芝ということもあり、攻める姿勢に迷いはさほどなかったろう。それでもやはり錦織を戸惑わせたのは、芝の上でも予想以上に高いジョコビッチの守備力だ。
「ラリーが長くなることは想定していたが、思ったよりディフェンスが良く、深いボールが返ってきた。攻めきれなかったのが……正直難しかったです」
第2セット、そして第3セット序盤にかけては錦織優勢の時間が続いたが、その中でも、予想より2球、3球と多く返ってくるボールが、錦織の精神に圧力をかけ心のスタミナを奪っていく。
「本当にフリーポイント(エースや、相手のミスなどで楽に得られるポイント)をなかなかくれない選手ですし、精神力もかなり使うので……」
並走状態に見える攻防の中で蓄積した心身のダメージは、やがては堤防が決壊するように一つの亀裂を機に顕在化する。3連続ブレークポイントの機を逃し、その直後のゲームをブレークされた、第3セットの第5から第6ゲームにかけての攻防は、その分水嶺(れい)だった。
「最後まで、ずっとチャンスは来ると思ってやっていましたし、3セット目も先にブレークチャンスがきた。取り切れなかったけれど、そこを取れれば、また自信が出てきてプレーも変わっていたかもしれない」
自分との戦い……錦織が打ち明ける“泡立つ心の内”
喜び、怒り……自らを鼓舞するかのように、感情をあらわにするジョコビッチ 【写真:ロイター/アフロ】
その「何か」とは、何か……?
実は試合後の錦織は、解決への糸口を示すかのような、興味深い言葉を残している。
それは、この試合でのジョコビッチが、時に過剰だと思えるまでに派手なジェスチャーや、感情的な姿を見せることについてのぜひを問われた際の、次の返答。
「普段の彼は、冷静にプレーする選手だと思う。でも特にケガから復帰した後は、以前よりも自分を鼓舞する必要がある」
この言葉は恐らくは、今年1月末に手首のケガから復帰してきた錦織が、自分自身に言い聞かせてきたことではないだろうか? 今大会での彼は「復帰してきてからは特に思うようにプレーできなかったり、『復帰前だったらこういうプレーができていたのに』と、けっこうネガティブな考えになることも最近は多い。正直楽しくない時もあるし、難しい時もある」と、泡立つ心の内を認めている。そのような「自分との戦い」の中で彼が心掛けてきたのは、「冷静になること」と「アップダウンをなくすこと」だとも言った。