「2番・大田泰示」の成長と未来 栗山監督が打順に託したメッセージ
昨季以上の成績で打線のキーマンに
初披露は開幕20試合目、4月24日のオリックス戦だった。本人が「一度も経験がない」という打順で起用されると、いきなり2本のアーチを架けてお立ち台に。そこから5試合で9安打を放って以降、従来の「2番打者=小技」のイメージから脱却した活躍を見せ続け、犠打0のまま、打率2割7分1厘、13本塁打、47打点の好成績を収めている。
高校通算65本塁打の大型内野手として、08年のドラフト1位で巨人入りした大田。「松井秀喜二世」として大きな期待を背負った中で大器の片鱗を見せながらも、さまざまな事情から伸び悩み、16年オフに2対2(大田、公文克彦と吉川光夫、石川慎吾)の交換トレードで日本ハム入りした。そして移籍初年度の昨季、打撃三部門すべてでキャリア9年の通算成績を超える110安打(打率2割5分8厘)、15本塁打、46打点をマークして“覚醒”してみせたが、さらに今季はそれ以上の働きをみせ、シーズン前に公言していた「シーズン25本塁打」も射程圏内である。
栗山監督の「気付かせる」手法
典型的な例が、今季主将を任された中田翔である。昨季までは調子の波によって気持ちにも浮き沈みがあり、自身の不甲斐なさに試合終了を待たずに帰宅したこともあったという。しかし、胸にキャプテンマークを付けて責任感を与えたことで、チームリーダーとしての自覚を持ってナインを牽引。春先の不調時も、ヘッドスライディングや全力疾走で鼓舞すると、交流戦突入後は自身の調子も上げて、6月24日には昨季超えの17号本塁打を放った。
エース候補の有原航平もそうだ。誰もが認める潜在能力を持ちながら、時折「楽」をする投球が散見された。アマチュア時代の「カットボールで簡単に打ち取れた」という成功体験ゆえのことなのだが、プロではそうはいかない。特に先発時は体力の温存という意識も相まってか、走者をためるとストライクを取り急ぎ、その結果、痛打を食らっていた。すると首脳陣は6月に、有原を一時的にクローザーに抜擢。「100%の全力全球」という立場を担わせることで「手を抜くな」というメッセージを送り、その重要性を認識させたのだ。