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ロシアのバーで感じた開催国の熱狂
日本敗退の寂しさと「負け方」の大切さ

GL最終戦では2連敗国の健闘が光る

2連敗のモロッコはGL最終戦でスペインに引き分けるなど、W杯出場国としての意地を見せた
2連敗のモロッコはGL最終戦でスペインに引き分けるなど、W杯出場国としての意地を見せた【Getty Images】

「今回のW杯は面白いな」と私が確信した瞬間があった。それはグループリーグ(GL)で2連敗したチームが、3節目で頑張って結果を残したことだった。


 A組ではサウジアラビアが2−1でエジプトを下した。

 B組ではモロッコがスペインに2−2で引き分けた。

 C組ではペルーがオーストラリアを2−0で破った。

 E組のコスタリカはスイスと2−2で引き分けた。

 F組では韓国がドイツに2−0で勝ち、前回王者が早々に大会を去る波乱が起こった。

 G組のパナマは結局3連敗で姿を消したけれど、いわゆるBチーム同士の戦いとなったベルギー対イングランド(1−0)より、ずっと面白い試合をチュニジア相手に演じてくれた。

 H組ではポーランドが私たち日本を1−0で下した。


 W杯は参加国数が拡大傾向にあるが、それでもやはり選ばれし32カ国の戦いであることは間違いない。2連敗し、大会を去ることが完全に、もしくは事実上決まっていても、しっかり痕跡を残して帰りたいという意地が、彼らの多くを最後に勝者とした。


 今回の私はペルー、モロッコ推しだったので、2連敗という結果に無念を感じつつも、最後には「やはり彼らを応援していて良かったな」と満足な気持ちで見送ることができた。そして「今大会は面白いな」と感じ入ったのだ。

吉田麻也は「美談で終わらせないで」と言うけれど……

日本が負けた悔しさと同時に感じた誇らしさ。心は今も揺れに揺れている
日本が負けた悔しさと同時に感じた誇らしさ。心は今も揺れに揺れている【Getty Images】

 W杯がノックアウトステージに入ると日々、クライマックスとアンチクライマックスが同時に起こり、ラウンドごとにチームが半分に減っていく。どこの国も目的はただ1つ、勝つ=次のラウンドに進むことだけだ。だから、ラウンド16で日本がベルギーに負けた時「逃した魚は大きかったな」と感じ、準々決勝のベルギー対ブラジルの激闘を見ながら、その思いがはまたぶり返してきた。


 日本が負けた悔しさ、日本が大会を去った寂しさ、しかし、日本のサッカーを見続けてきて良かったと思う誇らしさ……。私の気持ちは今もなお、行ったり来たりで揺れに揺れている。そして、ベルギーと戦い終えてから、吉田麻也が「この試合を美談で終わらせるのではなく、しっかり批判の記事も書いてください」と言って去って行った後ろ姿を思い出しながら、「やっぱり、良い試合だったな」と思い直すのである。


 同じようにロシアにとっても、やはりクロアチア戦で逃した魚は大きかったのではないだろうか。ベスト4に残れば、3位決定戦か決勝戦に出ることが保証されたのだから……。しかし、開幕戦でサウジアラビアに5−0で勝っても静かだったモスクワの夜を思い起こせば(オランダのテレビ局も試合後、モスクワの町から中継し、その静けさに驚いていた)クロアチア戦を応援する姿には、この3週間の彼らの進化すら感じた。


 サマラは試合会場のソチと時差が1時間あるため、すでに時間は真夜中の1時になっていた。バーから出てきたファンと、ファンフェスタ帰りの人の波が大きな行進となり、私たちは家へ、ホテルへと帰っていく。その時、『カチューシャ』(ロシア民謡)の歌声が自然発生で広がっていった。そして私は「やはり負け方は大事だな」と思うのだった。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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