スーパーGT、元F1海外ドライバーの系譜 パイオニアのコマスから王者バトンまで

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元F1チャンピオンの参戦

フル参戦1年目のバトンは1戦目から2位で表彰台に上がった 【(C)Honda】

 そんなコバライネンでさえ、表彰台に上がるまで丸1年、勝つには2年近くを要したわけだが、だからこそジェンソン・バトンがフル参戦初年度の1戦目から、2位表彰台に上がったのは、少なからぬ驚きではあった。元F1チャンピオンなのだから、「そのぐらい当たり前だろう」という声もあるだろうが、仮になかなか結果を出せなくても「今は長い目で見るべきだ、勝負は2年目から」という声も上がっていたことだろう。いずれにせよ、タイヤ無交換という今までやったことのない、逆にいえばやる必要もなかった作戦を成功させたことで、より驚きは増したものだ。

 そもそも出ると決まっただけで「バトン効果」は、絶大だったという。バトンが参戦することでスーパーGTへの注目、関心は著しく高まったとされ、今まで年に一度、F1だけを観戦していたファンが、「同じ費用でスーパーGTを2戦、3戦見られる」と歓迎しているという話も伝わってきた(バトンがもう、F1にはいないという背景もあるにせよ……)。新たなスーパーGTファンの開拓にもつながった一方で、開幕前のテストではバトンを一目でも、というファンの殺到でピット裏が渋滞し、シーズンが始まったらどうなることやら、と思ったもの。もっとも現在ではファンのマナー向上によって、過激な歓迎ムードは沈静化した印象もある。

バトン好調の要因

 さて、スーパーGTにおけるバトンの速さは、誰もが予想していたとおりではなかったか。GTがF1より重く、バランスに違いはあったとしても、はるかに高い次元のスピードを体験しているのだから。ただ、それは一発の速さであって、決勝レースでのコンスタントラップには疑問もあった。車両のセットも決めなくてはならないし、何より明らかな速度差のあるGT300をロスなく処理し続けていけるか、という面で。

 そこで所属する「チーム国光」は、今シーズン最初の公式テストで荒技に打って出た。初日2セッション、4時間をすべてバトンに走らせたのだ。まずはバトン好みのセットアップを進め、その上でGT300の処理をマスターしてもらおうと。幸いにも公式テストの地は、岡山国際サーキットというバトンにとって未知のサーキットであり、「かつて、ここでF1を開催したのか?」と当時を知らぬ者なら疑問を抱くほど、タイトなレイアウトで知られている。

 結果としてアクシデントに遭遇することもなく、タイムもトップからコンマ4秒ほどの遅れで6番手。しかも、バトンの進めたセットで翌日走行を開始したパートナーの山本尚貴が、いきなり2番手につけるという、うれしい誤算も。これはドライバーふたりの好みも一致した、ということも意味している。だから、チームとしては周囲がどう思おうと、「今シーズンは戦える」という見解になっていたのではないか?

 ここまで2戦終えて、開幕戦と第3戦で2位。NSX−GTが苦手とする富士でも、しっかり9位につけ、「RAYBRIG NSX−GT」と駆る山本とバトンは、現在ランキングのトップに立っている。ウエイトハンデが厳しくなってきたため、逆にバトンの初優勝は遠のいてしまう可能性も出てきたが、このままコンスタントにポイントを稼いでいけば、ウエイトが半減される第7戦、オートポリスやノーハンデとなる最終戦のもてぎでとびっきりの笑顔が見られそうだ。

(Text:秦直之)

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