ソフトB石川柊太「ライバルは昨日の自分」 チーム勝ち頭が重視する全力投球

週刊ベースボールONLINE

「しっかりと腕振って投げる」

今季は先発ローテの一角を担っている石川。チーム状況によってはリリーフもこなす 【写真:BBM】

 相手投手の状態にもよるが、石川が登板する日の試合時間が短いというのは一種の“あるある”。ポンポンと投げ込む姿は、実に小気味良い。

 登板日は試合前のストレッチから、じわじわ戦闘モードに入っていきます。逆に言えば、それまではほとんど全部“抜き”という感じですね。ヤフオクドームではマウンドに上がる際に大好きなももクロ(ももいろクローバーZ)の曲が流れるんですが、自分は投球練習のペースも早いんですぐ終わっちゃうんですよ(苦笑)。もっと聞きたいなとは思いながらも、自分のリズムを大切にしています。

 投球テンポが速いとよく言われますが、無理やり速くしようとかいうのはなくて自分の間合いで投げてのリズムなので、登板を重ねることでいい意味で固まってきているのかなと思いますね。昔から今のような速いテンポだったわけではないんです。これもいろいろ試した結果。それこそ、プロに入って1年目は1球1球ていねいに投げるためセットに入ってとかやっていました。

 リズムを考えるようになったのはプロに入ってからです。それまでは速いとか遅いとかあまり考えたことはなかった。でも、もともとブルペンのテンポはめちゃくちゃ速かったんですよ。現在のリズムはそれに近いかもしれないですね。

 昨シーズンのプロ初先発の日(5月31日の中日戦)。それまでの中継ぎとは意識を変えて「初回からどんどん投げ込もう」と思って投げていくうちに、自然と今のリズムになっていました。余計なことを考えずに、どうやったら(甲斐)拓也が構えているミットに行くかということだけに気持ちを集中させてポンポン投げていく過程で生まれたようです。

 今では間があると自分でボールの握りを探っちゃうときがあるんですよ。それが違和感になるくらい、自分の中ではいいリズムができているのかなっていうのはありますね。

 また、実質2年目で他球団からも対策される中、一定の結果を残せているのは気持ちの部分も大きい。開き直ってしっかりと腕振って投げるということを第一に考えています。そして、ストライクゾーンで勝負。“振ってもらってなんぼ”なわけで。そうなると調子が良かろうが悪かろうがストライクゾーンに投げ込まないと。実は自分で試合後に映像を見返すと、大分ど真ん中に投げてるなって思うときが結構あるんですよね。でも逆に狙い過ぎずに投げられているからいいのかもしれない。また、独特の変化をするカーブやスライダーなどで打ち気をそらすのも効果的なのかもしれません。

「目の前の1球1球に全力を注ぐ」

速い投球テンポは、特に意識しているわけではなく自分のリズムで自然になった 【写真:BBM】

 プライベートでも仲がいい上林誠知を筆頭に加治屋蓮や森唯斗ら石川の同期14年入団組の多くが、今季は1軍で奮闘している。同期たちに対する思いとは――。

 今シーズンは1軍に同期入団の選手が多くいて、みんなの頑張りを身近に感じています。刺激も受けていますが、素直にうれしいですよ。でも、同期だからといって「負けたくない」という気持ちはまったくないです。他人と比べるのは大学生のときにやめました。

 大学3年のあるときから、ほかの人の結果が気になるようになったんです。あいつがメンバー入ったとか、いいピッチングをしたとか。でも、それって気にしたところで自分ではどうにもできないことですよね。なのに、気になって気になってすごく苦しんだ。そのときに「お前はお前らしくやればいいんだ」って同級生に言われたんです。その言葉がスッと入ってきて。そこからは他人を気に掛けるのではなく、今までよりも『自分らしく』、他人は他人と割り切るようになりました。

 ただその代わり、自分には厳しくないとダメ。自分のハードルは自分でどうにでもできるので。カッコ良く言えば“ライバルは昨日の自分”って感じですかね(笑)。ほかの人の頑張りに対して闘志を燃やすなんて、自分の中では弱い心だなと思ってしまいます。それだったら自分で自分を高めてハードル上げていったほうが目標到達へ近道じゃないかなと。だからライバルとか誰かに負けたくないっていうのはないです。

 リーグ戦も再開し勝負の夏を迎えます。昨年、夏場にパフォーマンスが落ちたんですよ。それもあって今年は体重を昨年より5キロくらい、体脂肪を5%くらい落としています。また、オープン戦からしっかり週4日ウエートトレーニングを入れています。昨季の経験に基づいて早め早めにやってきました。今後この準備が、いいほうに転ぶといいのですが……。

 V2を達成するためには“できる”と思うことが大切になってきます。「優勝する、できる」と決めてやり続ける。優勝するというのは最終的なものなので、一戦一戦、自分は1球1球、一人ひとり、1イニング1イニングを意識する。先、先ではなくて、目の前の1球1球にどれだけ全力を注げるか。勝っていようが負けていようが死に物狂いでやるだけですかね、自分は。

   ※   ※   ※

 きちんと抑え、数字を残すのはもちろんのこと、「石川が投げるから見に行こう」と言われるような、人としても慕われ尊敬される選手になりたいという。チームの勝利のために懸命に腕を振る姿は、信頼とともに自身の魅力もアップさせる。

(取材・構成=菅原梨恵 写真=桜井ひとし、湯浅芳昭)

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