2戦連続3点差の勝利に沸くベルギー イングランド戦はメンバーの入れ替え示唆

中田徹

前評判通りの活躍を見せる1トップ2シャドー

ベルギーはアザールら1トップ2シャドーが機能し、チュニジアを5−2で下した 【Getty Images】

 6月23日(現地時間、以下同)ベルギーがチュニジアを5−2で下すと、誇張表現を芸風とするオランダ人解説者、ヤン・ムルダーはベルギーのテレビ中継で「(途中出場の)ミシー・バチュアイは6ゴールを決めることもできた。この試合は19−2にすることもできた」と興奮冷めやらぬ表情だった。
 
 剛のロメル・ルカク、柔のエデン・アザールがそれぞれ2ゴールを挙げた。ルカクはこれで今大会4ゴールと、得点王争いでポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドと並んで首位に立った。ドリース・メルテンスも18日に行われた初戦のパナマ戦で鮮やかなドライブシュートを決めている。ベルギーの1トップ2シャドーは、前評判通りのパフォーマンスと結果を出している。

 ベルギーが4−1とした後半6分のアザールのゴールは、胸トラップ、相手GKを交わすフェザータッチのフェイント、左足のシュート……と流れるようなプレーによるものだった。同時に、アザールのゴールをお膳立てしたトビー・アルデルワイレルトのロングパスも痺れるものだった。

 後半立ち上がりの5分間はチュニジアが何とか1点を返そうといくつかチャンスを作っていた。しかし、アルデルワイレルトの40メートルほどの正確かつスピードに乗った糸を引くような1本のパスが局面を変え、アザールのビッグプレーにつながった。

 アルデルワイレルトのキックテクニックには、アヤックス時代から定評がある。解説者のウェズリー・ソンクは「アヤックス・ユースのセンターバックは、1年に1000本、このようなキックを蹴る」とオランダ仕込みのパスに唸っていた。

チュニジア戦で復調を見せた選手も

カラスコ(左)はチュニジア戦で評価を高めた 【Getty Images】

 ウイングバックのトーマス・ムニエとヤニック・カラスコはチュニジア戦で評価を高めた。ムルダーは言う。

「アザールらが良いのは分かりきっていたこと。しかし『(ベルギーの)危険地帯』と思われていたムニエとカラスコが、今日は本当に良かった」

 ムニエは前半のアディショナルタイムに、ドリブルで中へ切れ込んでから一瞬ストップして、チュニジアDF陣の足を止めてから背後にスルーパスを出し、ルカクのゴールをアシストした。カラスコは数字こそ残せなかったが、後半、数多くのチャンスに絡んだ。

 パナマ戦のアルデルワイレルトはビルドアップで安全なパスに逃げてしまい、前半のベルギーの停滞を生んだ。ムニエはクロスが悪かった。カラスコも含め、パナマ戦での評価が低かった3人が立ち直ったのは、ベルギーにとって好材料と言えるだろう。

 アディショナルタイムにはMFユーリ・ティーレマンスのアシストからFWミシー・バチュアイのゴールと、若手2人が絡んでチームの5点目が決まった。

マルティネス監督は冷静さを保つ

「まだまだ改善の余地はある」とマルティネス監督に浮かれた雰囲気はない 【Getty Images】

 下馬評通りに攻撃陣が爆発し、快勝したとあって、ロベルト・マルティネス監督は「今日の試合は皆の記憶に残る素晴らしいものだった」と絶賛した。しかし、その口調と表情に浮かれた雰囲気はない。

「今日の試合はパーフェクトとは言えない。ベルギーは2−0とリードしたのだから、もっと試合をコントロールしないといけなかった。まだまだ改善の余地はある」

 これでベルギーは勝ち点6。グループリーグ勝ち抜けをほぼ決定した。次のイングランド戦、メルティネス監督はメンバーの入れ替えを示唆している。ルカク、アザール、メルテンスの3人はチュニジア戦でいずれも負傷を負っており、途中でベンチに退いている。

「もしイングランド戦まで7日あり、さらにベスト16戦まで7日空いているならば、今日のメンバーと同じでいくだろう。代表チームにとってオートマティズムを高めていくことは大事なことだ。それでも、もうすでにベルギーは勝ち抜けを(事実上)決めたんだ。イングランド戦は、メンバーの入れ替えをするだろう」

 2試合連続3点差の勝利に沸きに沸くベルギー。2点を失ったものの、チュニジア戦で魅せた攻撃サッカーは、ベルギー人にとっていつまでも美しい記憶として残るだろう。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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