引退の葛藤と戦い続けた村上大介 誰からも愛されたスケーターが歩んだ道
多くの選手やファンから慕われる存在に
多くの選手やファンから慕われた村上(青)。14年のNHK杯で優勝したときは、同大会で4位に終わった羽生結弦(右)も表彰式を見に行った 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
06年の世界ジュニアの記者会見では、優勝した小塚崇彦さんの記者会見で通訳を買って出た。その後、当時師事していたニコライ・モロゾフが拠点としていた米国・ハッケンサックでは、高橋大輔さん、安藤美姫さん、織田信成さんらとも一緒に練習していた。このころ安藤さんは、村上に英語を習ったという。
現役最後のコーチとなったフランク・キャロルがいるロサンゼルスに移ってからは、グレイシー・ゴールド(米国)やデニス・テン(カザフスタン)らと同じ時間に練習。キャロルコーチとゴールドから「(そんな弱気なんて)女子なのか?」と発破をかけられることもあった。
14年のNHK杯で村上が優勝した時には、ケガで4位だった羽生結弦(ANA)が、「ダイスが表彰台の一番上に立っていたので、拍手しに行きたいと思った」と表彰式を見に行った。
屈託のない笑顔と純粋なスケートで、ファンにも幅広く長く応援されてきた。そのキャリアを通して、村上大介という選手は誰からも愛されるスケーターとなっていた。
「スケートコミュニティーに恩返しを」
「スケートコミュニティーに恩返ししていきたい」。そう語る村上の今後に期待が高まる 【坂本清】
引退発表では「スケートコミュニティーに恩返ししていきたい」と話した村上。現役生活を長く続けたが、まだ27歳と若い。これからどんなこともできる。
現役時代につらく悔しい思いをたくさん経験したからこそ、そして何より多くの人たちから愛されている存在だからこそ、これからの彼は、選手時代の活躍以上のものを見せてくれるかもしれない。引退を寂しいと思う気持ちよりも、これからの彼が見せてくれるものへの期待感が大きい。そんな引退発表だったように思う。