「リクエスト」は投手にとって嫌な間!? NPB新ルールをOBが斬る(1)
今シーズンから導入された「リクエスト」制度。微妙な判定に対し、監督が映像を使ったリプレー検証を要求できる(写真はDeNA・ラミレス監督が「リクエスト」を行った場面) 【写真は共同】
果たして、「リクエスト」は日本球界にとってプラスになるのか。プロ野球OBの中根仁氏(元近鉄ほか、現役時代は外野手)、佐野慈紀氏(元近鉄ほか、同投手)、門倉健氏(元中日ほか、同投手)を3氏が顔を合わせ、ルールの是非について語り合った。
映像を大型ビジョンで流すのは…
門倉 まぁ、ピッチャーとしては嫌ですね。試合の最中に間が空くじゃないですか。リプレーを見ている時はどうしても試合が止まってしまうので、あの時間が嫌ですね。どういうふうに待っていればいいのか。ボールを投げるのか、投げないのか。ピッチャーもまだ慣れていない部分がある。微妙な判定になると、どうしても時間がかかってしまうことが多いですしね。
中根 そうだね。時間がかかり過ぎるのは良くない。でも、判定する側も慣れてくるだろうし、その時間もだんだん早くなるんじゃないかなとは思う。そのために、リプレー検証のスペシャリストを作るとか……。例えば、僕たちみたいなプロ野球OBをバイトで雇ってくれたらいいんだよ。
佐野 ハハハ、なるほどね(笑)。プロ野球選手のセカンドキャリアの支援になるしね。でも1試合で何度も試合が止まるのは、投げているピッチャーはもちろん嫌だし、観ている方も「早くしろよ」って思っちゃう。ルール上は、リプレー検証の時間は最長5分までって決まっているみたいだけど、もっと早くするのが理想だよね。
――メジャーでは多額の費用を投入して、リプレー検証用にカメラを1球場につき十数台を設置して、分析担当審判員も置いています。現状、日本ではそこまでのシステムが確立されていません。カメラのアングルや性能で、リプレー映像を見てもどちらか分からないという場面も目立ちます。
中根 そうだね。現状、メジャーのようにお金をかけてカメラを設置できないのは仕方ないとしたら、観る人の眼を増やすか、鍛えるしかないんじゃないかな、と思うよ。
門倉 それに個人的には、リプレー映像を球場内の大型ビジョンで流すのは「どうなの?」とは思いますね。その部分に関して、僕はあんまり賛成ではないんですよね。審判に対してブーイングが起きるようになって欲しくはない。
佐野 それは僕もそう思う。審判の立場からすると出さない方がいい。出す必要はないよ。
中根 でも、リプレー検証されるってなると、審判も下手な判定はできないし、これまで以上の緊張感を持って試合を見てくれるとは思う。それによって、審判の技術、見る眼っていうのが上がっていけば、それはいいことだと思う。
佐野 そうなればいいよね。でもそうだとしても、結果が出る前に先に映像を出しちゃうのはどうかなと思う。判定が決まってから、「実際はこうでしたよ」っていう形で映像を出すのはいいと思うけどね。審判もいい加減にやっている訳じゃないから、最初の判定がリプレー検証で覆ったとしても、審判を責めるようなことはして欲しくない。
門倉 人間の眼には限界があるし、人間だから誰もが間違うことはある。それを映像で補っていけば、ということだからね。
佐野 そうだね。ワンプレーのアウト、セーフは、選手にとっては死活問題だし、間違いのない判定が出るというのはいいこと。それで審判のレベルも上がっていけばいい。ファンもその部分を理解してもらえれば、いい方向に進んでいくんじゃないかと思う。