ヤクルト石山が新守護神として存在感 交流戦王者へチーム支える意識の高さ
交流戦首位を走るヤクルトの守護神に6年目右腕・石山が定着しつつある 【写真は共同】
これから最終回を迎えようという神宮球場にスタジアムDJ、パトリック・ユウ氏のハイトーンボイスが響き渡る。まだ、勝利へのカウントダウンとなる3つのアウトカウントを残す段階でありながら、そのセリフにはゲームオーバー、すなわち試合終了のニュアンスすら感じられるようになってきた。
それほどまでに東京ヤクルトのクローザー、石山泰稚の安定感は群を抜いている。今季はここまで27試合に登板して2勝0敗9セーブ、防御率0.91(6月11日現在、以下同)。特にパ・リーグ球団との対戦では1勝0敗5セーブ、防御率0.00と、初の交流戦王者に向けて首位を快走するチームを支えている。
13試合連続無失点を継続中
今季の好調の要因を石山はそう話す。社会人のヤマハからドラフト1位でヤクルトに入団して、今年で6年目。1年目の2013年には60試合の登板で3勝3敗10セーブ、21ホールド、防御率2.78の好成績を残し、オールスターにも出場した。その後は先発転向や故障もあって伸び悩み、昨年はいずれも自己最多の66試合登板、24ホールドを記録したものの、大事な場面では必要以上に力が入りすぎて自滅することも少なくなかった。
今年は開幕の時点では、昨年と同じ中継ぎ。だが、その胸の奥底には野心を秘めていた。
「7回、8回で投げていても、(抑えとして)9回で投げたいっていう気持ちはありました。シティー(新外国人のマット・カラシティー)が抑えで投げていたんですけど、(抑えを)奪うぞっていう気持ちでしたね。リリーフだったら、9回が一番いいですから」
カラシティーの不調により、4月下旬から新守護神に抜てき。5月1日の中日戦では1点リードの8回途中からマウンドに上がって逆転されると、6日の広島戦ではイニングまたぎの10回に勝ち越しを許すなど、当初は上手くいかないこともあった。しかし、その後はセーブ失敗は皆無。8日の中日戦からは13試合連続無失点を継続している。
コーチ、正捕手も認める「変革」
「今年はフォークでカウントを取れるし、三振も取れるようになってるということで、抑えとしての資質が備わってきたのかなと思います。去年までも投げてたんですけど、浮いたら打たれるっていうのがすごく彼の中にはあって、どうしてもワンバウンドになっちゃってたんですよ。でも、ワンバウンドしか投げなかったらバッターに(頭から)消されちゃうから、『フォークをとにかくストライクに投げてみてくれ』って言ったんです」
そう話すのは、昨年から1軍投手コーチとしてブルペンを担当している石井弘寿コーチ。その効果のほどは、石山自身も認めるところだ。
「去年と比べたら、格段にバッターが反応してくれる球になってるんじゃないかなと思います。田畑(一也投手)コーチや石井コーチに言われてオープン戦からちょっと意識を変えたんです、ストライクゾーンに投げ込もうって。だんだんそれが良くなってきたっていうか、コントロールできるようになってきたっていう感じです。最初の頃は石井コーチが『それで打たれたらオレのせいにしていいから』って言ってくれたんで、それで(フォークを)使いやすくなったっていうのもありますね」
石山の「変革」はそれだけではない。正捕手の中村悠平は、昨年までとの意識の違いを挙げる。
「今年は意識がすごく高いっていうのか、『ここは絶対に低く投げるんだ』とか、『この打者は真っすぐに強いから、ここは変化球だ』っていうのを考えて、自分で(サインに)首を振って変化球を要求してますし、真っすぐで行くなら絶対にファウル(を取る)っていう意識で投げたりもしてるし、そういったところですね」
石井コーチもその点を指摘する。
「ただ投げて抑えるだけではなくて、その中でどういうアウトの取り方をするかとか、その場面では何が一番ダメなのかっていうのをすごく考えられるようになってますよね。たとえば……」
例に挙げたのは、前出の5月8日の中日戦。同点の9回に登板した石山が、1死満塁のピンチを招きながらも後続を断ち切って、結果的に引き分けに持ち込んだ試合だ。
「バッターが平田(良介)と高橋(周平)だったと思うんですけど、1点入ったら終わりって場面でただアウトを取るんじゃなくて、全部低めに集めて(2人とも空振り)三振に取ったんです。後で話したら『高めはフライもあるし、間を抜かれることもある。外野もすごい前進してたから』って、そこまで考えてたって言ってましたよ。そこが(昨年までとの)一番の違いですね」