菊池雄星、仲間との約束守った復帰戦 圧巻の投球でエース復活をアピール
ほぼ投げ損ないがなかった外角速球
左肩の張りで登録抹消されていた西武・菊池・約1カ月ぶりの復帰登板となった阪神戦でストレートが最速157キロを計測するなど復活をアピールし、6勝目を飾った 【写真は共同】
捕手の炭谷銀仁朗がジェスチャーで菊池に何かを伝えたのは、先頭打者の6番・中谷将大に1ボール2ストライクから3球続けてファウルにされた直後だ。7球目のサインを出すや、右の前腕を前に振った。多くの場合、腕の振りが弱い投手に対し、「もっと強く振れ」というジェスチャーだ。
だが、炭谷の意味するものは違った。
「今日、右バッターへの外の真っすぐは全部、吹き上がった感じで空振りやファウルを取れていたから、高めでもいいよという意味でやりました」
外角に意図したボールは真ん中低めに入り、ライトフェンス直撃の三塁打を打たれたものの、スタメンに8人の右打者を並べた阪神打線に外角ストレートを投げ損ねたのはこの1球のみだった。最速157キロを計測するなど強い威力を誇り、阪神打線は高めのボール球を再三振らされていた。
菊池は5回無死三塁のピンチを無失点で切り抜けると、6回もスコアボードにゼロを並べて降板する。2番手以降が完封リレーでつなぎ、4月28日以来となる今季6勝目を飾った。
三振は失点ゼロを狙っての結果
最多勝&最優秀防御率の二冠に輝いた昨季から飛躍を期待された今シーズン、球団初となる開幕投手5戦5勝と記録上は好スタートを切ったものの、内容はまるで伴わなかった。3月14日、中日とのオープン戦を迎える前に首を寝違えたことで、調整が遅れた影響だった。
万全とは程遠いコンディションは球威、制球のみならず、心理面にも悪影響を及ぼした。
「離脱する前はどうしても肩をかばいながら、1球1球、『大丈夫かな?』という感じで、対バッターというより対自分と戦っていた部分が多くありました」
心身の不調を立て直すために登録抹消からの再調整を決断し、約3週間後に迎えた復帰マウンド。注目したかったのは、菊池の“メンタルブロック”がどれくらい外れているかだ。
「地に足がつかない感じが初回からありました」と振り返った立ち上がり、ヒットと四球でいきなり無死一、二塁のピンチを招く。しかし、「丁寧に行くよりも落ち着くまでガンガン腕を振っていった方が、経験上、いいことがあると思って初回から飛ばしました」。
そうして初回のピンチを無失点で切り抜けると、続く2回の無死二塁では3者連続空振り三振とねじ伏せる。2点リードの5回には再び無死三塁のピンチに立たされたが、3つの空振り三振で切り抜けた。
「(5回は)守備位置を見ても『1点OK』という場面でしたけど、僕の中では0と1では全然価値が違うものだと思っているので、三振を取りにいきました」
得点圏に走者を背負うと意図的にギアを上げ、三振という狙い通りの結果を収めてみせた。