熱を帯びる「Numberプロレス総選挙」 ファンの“フェアネス”が企画の鍵!

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今年も開催中の「Numberプロレス総選挙」。企画誕生の経緯などを担当者に聞いた 【画像提供:Number編集部】

 総合スポーツ雑誌『Number』で現在開催されている「(忖度いっさい不要! 今年もやります)プロレス総選挙」。今回で3回目となる「現役最高レスラーを決める投票企画」は、間もなく投票受付の締め切り(5月29日まで)となる。

 2015年に、新日本プロレスの顔と呼べる選手を決める企画として始まった「総選挙」は、どのようにして生まれたのか? 今回はナンバー編集部の松井一晃編集長と編集者の薦田岳史さんに、企画が始まった経緯や、今年の傾向などについて聞いた。

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新日本が勢いを取り戻し企画案が挙がる

12年のブシロードの子会社になって以来、新日本プロレスが勢いに乗り、15年頃には再興に成功していた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 15年7月30日号の「Number 882」で新日本プロレス特集を企画した経緯について、松井編集長はこう話す。

「この企画を始めるまで、近年のナンバーではプロレス特集がありませんでした。それは2000年代の『格闘技ブーム』の中で、プロレスが“最強を争うもの”から滑り落ちてしまい、一方でPRIDEやK-1といった特集を年に数回出していた影響もありました。その格闘技の盛り上がりが落ち着いてきて、プロレスも格闘技も特集していませんでした。
 ただ新日本プロレスの親会社が「ブシロード」(※12年1月に全株式をブシロードが保有し子会社に)に変わり革新的に攻めていて、それこそ、プロレスが“最強を争うもの”というより“最高の試合”を見せていることで、お客さんが会場に戻ってきていることを肌で感じ、また周りのいろいろな方からそういった話を聞いていました」

 新日本が再び業界の最前線に立ち、勢いを取り戻してきていることを見聞きする中で、ナンバー編集部のOBでもあるノンフィクションライターの柳澤健さん、さらにプロレス好きのお笑い芸人・プチ鹿島さんと話す機会があり、そこで「新日本プロレスを1度、特集できないか」という話題になった。

「新日本が今、すごく盛り上がっているという話になり、『今、新日本が戻ってきたこの勢いの中で、団体を引っ張っているのは誰なのかを総選挙で決める……みたいなことをやるのはどうですか?』と、最初はプチ鹿島さんが言ってくれました。それで、新日本プロレス復活の立役者は誰なのか、お客さんの支持を得ているのは誰なのかを選挙方式でやるのも面白いのではないかという話になりました」

 誰がファンの支持を一番得ているのか。そしてその選手が「ナンバーの新日本特集の表紙になる」ことはどうかと、企画が膨らんでいった。

第1回から予想を上回る投票数

2015年、新日本プロレスファンの一番の支持を集めた選手は棚橋に。この年棚橋はG1も制覇している 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 ただ「表紙」をかけるには、ナンバーとしても懸念点はあった。

「もしファンに委ねて、“おふざけ票”が多く入り、想像もできない選手が表紙になったら困るというのはありました。その不安を口にしたら柳澤さんもプチ鹿島さんも『絶対にそんなことはありえない』と断言してくれました。プロレスファンは自分が愛しているジャンルを否定するようなことは絶対にしないと」

 プロレスファンを代表する2人からの進言で特集企画が動き始めた。そして事前に新日本プロレスへ企画の趣旨を説明すると、「喜んで協力する」と返事をもらい、企画が実現されることになった。

 そして15年5月28日から6月25日まで約1カ月間の総投票人数は1万1356人。(総投票数は2万6076票)。この投票数は予想を上回るものとなった。

「最初はかなり難しいハードルだと思っていましたが、統計的にも有効な選挙にするため2000票から3000票ぐらい集まってほしいと思っていました。この段階で1万人を超えたということで、当時は『やはりプロレスファンは熱心で、熱い』と思いましたね」

 そして結果として、棚橋弘至が投票締め切り間近に中邑真輔を抜いてトップに立ち、ナンバーの表紙を“新日本プロレス復活の立役者”が飾ることになった。また投票数だけでなく、この号の実売部数は年平均を上回る好評企画となった。

テレビの結果に納得がいかないファンの受け皿に

16年に中邑がWWEへ移籍したこともあり、この年は中邑とオカダ&内藤という2つの表紙でプロレス特集を発売した 【(C)2018 WWE Inc All Rights Reserved】

 第1回の成功もあり、翌年もプロレス特集を行うことが決定。16年に関しては、中邑のWWE移籍(16年2月)があり、8月には「G1 CLIMAX」も控えているということで、2つの別表紙(1冊は中邑、もう1冊はオカダ・カズチカ&内藤哲也)で「Number PLUS」8月号を出版した。

「この年はWWEの日本公演やG1の前に、プロレスの現在、新日本以外を含めた魅力的なレスラーを紹介する特集にしようとなりました。プロレスファンの方には、今年も特集をしてくれたと歓迎してもらい、こちらも好評でした」

 この結果、17年もプロレス特集を行うことが早くも決定となった。

 そして17年、再び“総選挙”という手法に戻ることになる。ちょうど同年の3月12日、『プロレス総選挙』というテレビ番組が放送された。深夜時間帯の番組ながら熱心なプロレスファンからの反響は大きく、ランキングに対する意見が飛び交った。というのも、上位を1位・アントニオ猪木、2位・ジャイアント馬場、3位・初代タイガーマスクとレジェンドレスラーが並び、さらにオカダ、棚橋、獣神サンダー・ライガーといった新日本プロレスの選手が多くを占めたことで、本当に業界の意見が反映されているのかという批判にもつながっていた。

「ちょうど春先に、再び柳澤さんやプチ鹿島さん、プロレス関係の方と話す中で、総選挙の話題になりました。テレビの結果もオールタイムベスト投票と考えれば、フェアな部分はあると思いました。ただ、もしそれを批判するプロレスファンがいるのであれば、誰でも投票したい人を投票できる、本当に“ガチ”なNumberプロレス総選挙で、『今、最高のレスラーは誰だ?』を選んでみてはと。だから、ナンバーがあの結果に納得できていないファンの受け皿になってみようとしたことは事実です。表紙に対する懸念はまだありましたが、このときにはプロレスファンの“フェアネス”は信用できると思っていたので、企画に踏み切りました」

『これがホントの2017年プロレス総選挙 現役最高のレスラーはあなたが決める!』――。全団体に枠を広げ、プロレスファンの熱い思いを募った結果、投票者数は2年前から倍以上になる3万5484人に上り、松井編集長も「びっくりしました」という結果になった。

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