下田裕太「プロになることも考えた」 青学大での苦悩、社会人1年目の夢を語る

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社会人ランナーとして新たな一歩を踏み出した下田裕太に、今の率直な思いを聞いた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 東京・渋谷のど真ん中にあるGMOインターネットグループ本社の会議室。白と黒の真新しいウェアをまとった下田裕太が、いつもの明るい笑顔で現れた。

 青山学院大のエースとして活躍し、4連覇した箱根駅伝では8区を3度走ってすべて区間賞。19歳の大学2年生で初挑戦した東京マラソンでは2時間11分34秒をマークし、日本人2位となる10位に入る快挙を果たした。この春大学を卒業し、花田勝彦監督率いるGMOアスリーツで新たなスタートを切ったばかりだ。

 学生陸上界に確かな足跡を残した一方で、主力としての看板を背負った3、4年時は「かなり苦しんだ」とも明かす。青山学院大での4年間、そして実業団ランナーとして新たな一歩を踏み出した今の思いを聞いた。(取材日:5月9日)

仲間に「刺激をもらった」社会人デビュー戦

――社会人になって1カ月経ちました。今の率直な気持ちを教えてください。

 今は新しい生活環境や練習の流れ、仕事のことなど、自分の生活リズムをつくっていくのに手いっぱいな部分があります。ただ、僕はこれまでも環境が変わったタイミングで(成績が)伸びてきたなと自分で思っているんです。大変な部分はありますが、今はがむしゃらに、本当に新たな気持ちでいろいろなことに取り組んでいこうという強い気持ちがありますね。

――社会人初レースは4月22日の日体大記録会(5000メートルを14分08秒42)でした。新人研修もあったそうですが、忙しい中での実戦はいかがでしたか?

 研修中は朝練しかできなくて、その後も朝から晩まで研修という感じでしたし、その前の1カ月はあまり練習が積めていませんでした。その中で、想定していたくらいのタイムで走れたので、良い状態できているなと再確認できました。それに同級生の田村(和希/現住友電工)や神野(大地)さん(青山学院大の2学年上で、コニカミノルタを経て今春プロ転向)と一緒の組だったのですが、しっかり走れているのを見て「自分ももっと頑張らなきゃな」と。走りよりもメンタル的な部分で刺激をもらいました。

――ご自身のブログには、そのレースで少し問題があったようなことを書いていましたが、以前もできた足のマメですか?

 はい、マメですね。マメのできる位置が変わったり、接地も良くなってきたりしていますが、対策をしていなかった左足の小指側にできてしまいました。練習ができていないとフォームが崩れるのはもともと分かっていたので、やらかしたなという気持ちもあります。

――大学4年の出雲駅伝では足のマメが原因で失速し、続く全日本大学駅伝にも影響が出ました。大学3年からフォーム改良に取り組まれていましたが、そういった影響もあるのでしょうか?

 いろいろな要因が重なっていると思うので、「これだ!」というのはあまりないと思うんですけどね。僕、高校3年間と大学3年間では、マメは1回も出たことがないんです。マメができるようになったのは4年生になって右ひざの故障が明けてからです。何が原因か分かっていたら苦労しないと思うので、突き詰めないといけないのですが、補強などしてきて、少しずつ接地も良くなってきていると思います。

MGC出場権獲得は暑い北海道マラソンか、ワイルドカードか

8月の北海道マラソンを見据えて新天地で練習に励む 【写真提供:GMOアスリーツ】

――さまざまなチームから勧誘があったと思いますが、GMOアスリーツを選んだ理由は?

 僕はGMOにするか、プロになるかしか考えていませんでした。なぜかと言うと、(青山学院大でフィジカルトレーニングを担当する)中野ジェームズ修一さんが主宰する「スポーツモチベーション」から離れて陸上をやることは考えられなかったんです。GMOはスポーツモチベーションのフィジカルトレーニングを導入しています。花田監督とも話しをして、まずは監督を信じていけるところまでいってみようと心に決めて、GMOに決めました。フィジカルトレーニングでは、今は大学2年くらいからずっと見てくださっているスポーツモチベーションの栗城徳識トレーナーにサポートしてもらっています。

――現在の練習内容はどういった感じですか?

 今のところ北海道マラソン(8月26日)に出ようかなという話をしています。それに向けて6月から合宿があるのですが、合宿でしっかり走り込むためには、ベースを作りながらスピード感を出さないといけません。そのためにも、まずは5000メートルで13分台を出して、マラソン練習に入っていきたいと思っています。

――学生時代の練習と比べて、違いは感じますか?

(練習では)大学よりもさらに自分で考えて練習しないといけない部分が増えてきていますね。一人暮らしですし、周りの目がない中で練習しないといけない。そういう意味では自分で組み立てられる良さはありますが、逆にどこまでもサボることができてしまうので、しっかりと自分で考えながら、目標に向って練習に取り組んでいきたいと考えています。

 GMOではポイント練習の日は決まっていますが、練習メニューの内容は、花田監督と相談して決めることもできます。「状態が悪いからメニューをちょっと変えてみよう」というのも、すごくフレキシブルにできますね。花田監督は日本代表として世界で戦ってきた選手で、引き出しはたくさんあると思います。新たなものを取り入れて自分の中でどういう反応が起きるかというのも楽しみです。

――まずは北海道マラソンに向けてとなりますが、MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ。東京五輪のマラソン代表選考レース)の出場権獲得は当然狙っていく?

 そうです。でも福岡国際マラソンの可能性もゼロではないですね。福岡国際マラソンと東京マラソンを走ってワイルドカードでMGC出場権を獲得するのと、まだそんなに練習ができていない中、暑い北海道マラソンで(1キロ)3分10秒で押していってMGC出場権を獲得するのと、どちらのほうが可能性が高いかなと考えた時に、今は北海道マラソンに出ても面白いかなと思っています。

 もちろんMGCには出たいと思っています。まだ東京五輪に出られるかは分かりませんが、僕がメダルを取れるとしたら、暑い中でのレースでないと難しい。しっかり練習を積んで、2024年のパリや2028年のロサンゼルスで五輪を目指したいという気持ちもあるのですが、メダルを狙うならやはり東京だと思っています。そこのジレンマはありますね。

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