ヘント久保は代表追加招集を信じて待つ 最終戦のゴールで「アピールはできた」

中田徹

リオ五輪不参加決定後と同じイメージで

3月の代表戦に出場した久保。W杯メンバーに滑り込みで復帰なるか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 代表から落選した時の気持ちを、久保はベルギーメディアに対して英語で「ディスアポインテッド」、つまり「がっかりした」と語っていた。果たして、この言葉は久保の気持ちを正確に表していたのだろうか? 久保は「そういうニュアンスではない」と否定してから、「より奮起するという思いにさせられたということですね」と説明した。

 だが、クラブ・ブルージュ戦への挑み方に関しては、久保の思考はシンプルだった。

「とりあえずは考えないようにして、このゲームに勝つように(気持ちを集中させた)。でも、シンプルでした。このゲームで結果を残せばチャンスはある、残さなかったらなくなると、その二択で考えていました。それがうまく良い方向にいったので、良かったです」

 ここで久保が「ちょっと今回と事情は違いますが」と言って例に挙げたのは、2016年リオデジャネイロ五輪のことだった。久保は、リオ五輪に臨むU−23日本代表の正式メンバーに選ばれたものの、当時所属していたヤングボーイズのチーム事情によって急きょ、クラブでの活動を優先せざるを得なくなってしまった。この時、久保は失望を発奮材料に変え、チャンピオンズリーグ(CL)予選3回戦、シャフタール・ドネツクとの第2戦で2ゴールを決める大活躍をした。

「あの(五輪不参加決定)後の試合(シャフタール戦)も結果を残しました。その良い流れを(今回も)イメージしていました。そういう(悪い話の)後には良いことがあると、自分の中で言い聞かせてやりました」

「ポリバレント」な役割は望むところ

 中島翔哉の代表不選考の理由として「ポリバレント」という言葉が使われ、それが今話題になっている。ベルギーに来てからの久保はシャドーストライカー、右ウイング、トップ下、インサイドハーフ、偽の9番と多くのポジションをこなしてきた。日本ではオーソドックスなストライカーの経験もある。久保は、かなりポリバレントなプレーヤーなのではないだろうか?

「もともと、たぶん僕はそういう選手だと思う。ポリバレントという言葉自体あまり知りませんが、今までもいろんなポジションをやらされてきました。ずっと1つのポジションにこだわってやってきたわけではない。そういう意味では、そういうの(ポリバレントな役割)を求められているのなら、僕は“そっち側”の人間じゃないかなと思います」

 最近になって久保はFKとCKのキッカーも任されている。「武器」と言うには、まだ結果が出てないが、もともとキックのテクニックが高いプレーヤーだけあって、久保はなかなか良いボールを蹴っている。

 18日の会見で西野朗監督が「もちろん(久保を)戦力として考えておりますし、(中略)追加での招集も十分考えております」と答えた言葉を信じ、久保はクラブ・ブルージュ戦をプレーし、ゴールという結果を残してチームを勝利とEL行きに導いた。

「(自分がワールドカップに向けて)しっかり準備ができているというのはアピールできたと思います。あとは日本に帰ってトレーニングを続け、(招集の連絡を)待つしかないです」と久保は語った。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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