個性あるMLBスタジアムを紹介 藪恵壹氏のお気に入りの球場とは!?

週刊ベースボールONLINE

藪氏がメジャー初勝利を挙げたエンゼル・スタジアム。レフト後方にブルペンがあり、敵同士が上下に並んでいる 【Getty Images】

 メジャー30球団のスタジアムは日本の球場以上に、それぞれの個性がある。ここでは実際にそのマウンドに上がり、ファンが知らない部分までも経験している元メジャー・リーガー藪恵壹氏に、各スタジアムのとっておきの話を聞いた。

街と球場が一体のボルティモア

メジャー移籍をする前にアメリカで出版された「BALLPARKS」という球場雑誌を購入し勉強していた藪氏 【写真:BBM】

 2005年にアスレチックスにFA移籍しましたが、当時は今のようにメジャーに関する情報がそこまで多くなかったですし、どの球団になるのか分からない部分もあったので、メジャー30球団全球場が掲載されている本を買いました。かなり大きいでしょ? これでイメージトレーニングをしていました(笑)。

 メジャーの球場はどんなにキレイな球場なのかな、とすごく憧れて海を渡りました。その中でまず「これがメジャーか!」とテンションが上がったのは、スプリング・トレーニングでのことです。現地入りしてユニホームを作るため、体のサイズを計ったのですが、翌日に球場のクラブハウスに行くと、全員のユニホームが出来上がりズラッーと並べられていた。これは壮観でしたよ。

 話が少し横道にそれましたが、その次に感動したのが、ボルティモアの街です。ベーブ・ルースの生家があり、野球にまつわるものが多く点在しています。そこを歩きながらオリオールズの本拠地、オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズに向かいました。この年の開幕戦はここでした。ボルティモアの街と球場が一体となっている印象が強かったですね。

 そしてアスレチックス本拠地のオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムに帰ってきたときには、緑の芝が映えてキレイだったですし、ここはNFLのレイダースの本拠地でもあるので、ファウルグラウンドがとにかく広いのです。阪神時代に甲子園を本拠地にしていた私にとっても、広く感じましたね。

エンゼル・スタジアムの不思議

 05年4月22日(現地時間)に、エンゼルス相手にメジャー初勝利を挙げましたが、それは現在、二刀流で活躍する大谷翔平選手の本拠地であるエンゼル・スタジアムです。この球場の特長はレフト後方に、ホームとビジターのブルベンが併設されているところです。上段がエンゼルス、下段がビジターチームで、敵の中継ぎ陣が後方にいるという不思議な感覚がありました。試合中には「おい! あの打者はデータと違う打撃をするじゃないか」などと、お互いに話し掛けることもありました。

 ア・リーグで一番投げにくかったのは、レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークです。マウンドに立つとレフト後方のグリーンモンスターの圧迫感がすごかったですね。狭いので簡単にホームランになりそうな感覚なのです。それにライトも塀が低くて簡単にホームランになりそうでした。実際1年目で6本塁打されていますが、1試合で2本をここで打たれました。

 一方でヤンキー・スタジアムは投げやすかった。そう私が投げたのは旧ヤンキー・スタジアムですよ! 言葉で表現するのは難しいですが、捕手方向に向かってマスクのアゴの部分のように細くなる感覚で、投球に集中できる感じがしました。

メジャーの球場を一番堪能した日本人

ジャイアンツの本拠地AT&Tパークのシンボルマークの大きなグラブ。メジャー・リーガーはグラブへ投げ入れる遊びをしていたという 【Getty Images】

 その後、08年にジャイアンツでプレー。このときは、ナ・リーグ西地区の宿敵ドジャースのドジャー・スタジアムのブルペンは外野席の隣にあり、かなりヤジがひどかった。また同地区では、パドレスの本拠地ペトコ・パークは“ピッチャーズ・パーク”で右打者だけをケアすればよかった球場でした。というのも、海辺の近くで浜風が右中間後方にある2つの大きなビルに当たって球場に返ってくるので、ライトからホームへ風が入ってくるのです。マウンドに上がっているときでも、その風は感じていましたよ。

 さてジャイアンツの本拠地AT&Tパークですが、ここはすごく投げやすい球場でしたね。当時のクローザーだったブライアン・ウィルソンは、打撃練習のときに、球場の左中間奥に飾られている巨大なグラブに向かって、思い切り投げていました。このグラブは本物の革でできているのですが、かなりの距離を投げないと届きません。また、レフト3階席に向かっても投げ込んでいました。「君もやってみろよ」と誘われましたが、かなり高いのでやめておきました(笑)。

 私は、とにかく朝早くから球場に入るのが好きでした。ビジターでは起きてすぐ球場に向かい、朝10時半くらいからクラブハウスでいろいろなことをしていました。どこもすごく立派なチェアーやソファがあり、そこでゆったりしながら、さまざまなDVDを観賞できましたし、朝食もビジター専属のシェフが作ってくれるので、楽しんでいました。3食とも球場で食べたりもしていました。本当にいろいろなものがあって退屈することはなかった。それに試合に向けていろいろな準備をする、いろいろなスタッフの働く姿を見るのが興味深かったです。

 多分、日本人メジャーリーガーで一番メジャーの球場を堪能したのは私ではないかな、と自負しています。

(取材・構成=椎屋博幸)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント