森岡亮太が飛躍を遂げた1年を振り返る 来季は「CLアンセムをピッチで聞きたい」
「日本人は理解力が高い」
ベルギーの名門アンデルレヒトにステップアップ 【Getty Images】
すごいですよね。アンデルレヒトは、ユースの選手がトップチームの練習に入っても、同じテンポでプレーができるんです。そこがすごいと思います。セカンドチームの選手がトップチームの練習に参加しても、相当できますからね。セカンドチームの選手は18歳から20歳、21歳ぐらいまでなのですが、彼らの質は高いですね。J1でも通用するような選手ばかりです。
――アンデルレヒトのU−19チームが毎春オランダに来るのですが、プレーはうまいし、複数のポジションをこなすことができて、賢い印象です。
ユースの段階でもう完成されていて、自分の型を持っている。しかも、プレーも振る舞いもまさにプロみたい。見ていて、本当にすごいなと思います。18歳のころを比べると、高校生時代の自分のレベルは全然高くなかった。ヴィッセル神戸に入ったのも、幸運に恵まれていたと感じます。
――時間、間合い、深みを1人で作り出せるのが森岡選手です。スプリントし、走った先でピンポイントのパスを受け、味方に折り返したり、自らシュートを撃ったり……そういったアンデルレヒトでのプレーは新たな挑戦なのでしょうか?
そうですね。アンデルレヒトではプロサッカー選手になってからやっていなかったことを求められています。
――「今は考えてやっている。それを無意識まで落とし込みたい」と話していた時期もありました。今は、考えるより先に体が動くところまできましたか?
まだ、やっぱり考えているときも多いですけれどね。
――練習したことを、実戦に落とし込んでゴールを決めている印象ですが。
練習でできたことが、試合でもできることがけっこう多いですね。やろうとしていたことが、試合でもできているとか。それは割とありますね。
――理解力の高さを感じます。
日本人は、こちらの人と比べてもやっぱり理解力が高いと思いますよ。(ヨーロッパには)本当に理解できていない選手もいますからね。そんな選手、日本でも見たことがない。
名門アンデルレヒトの緊張感
合戦と言うより、こっちサイドにポジショニングがある。
――こっちサイド?
つまり(ポジショニング取りの選択権が)アンデルレヒトサイドにある。攻撃する際のスタートポジションが決まっているんです。ベフェレンだと、僕やボランチに、ある程度の自由が与えられている。それがアンデルレヒトにはない。その違いはありました。
――昨日は「ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のサッカーと、ハイン・ファンハーゼブルック監督のサッカーは近しいものがある」と言っていました。
近いといっても、極論を言ったら全然違うサッカーですよ。求めていることに同じ部分があるというだけで、トータルで見たら戦術的にもパーソナリティー的にも全然違う監督ではあります。
――話せる範囲で構いませんので、そこを教えてください。
ディフェンスに関しては、デュエル(球際の競り合い)であったり、ポジショニングであったり、似たようなことを言っています。そこには確かに近しいものがありますが、戦術的な部分が一緒かと言ったら全然違います。
――ファンハーゼブルック監督の戦術とは?
攻撃する時にスタートポジションが決まるんです。まず、アンデルレヒトはその形を作ってから攻撃します。一方でハリルホジッチ監督は、ボールを奪った状態から、いかに速く、手数を少なく攻撃するかが肝心。だから2人は攻撃のスタイルが全然違います。
――ファンハーゼブルック監督は、その形が整うまで、横パスなどを交えて間(ま)を置くわけですね?
もちろん、速くいける時は行きますが、形が整うまでは時間を作る。アンデルレヒトは後ろからつないで崩せるレベルを持っているので、スタートポジションからしっかりやれば良い。その形を練習からよくやっています。
ハリルホジッチ監督の戦術は、攻撃に関してはカウンターがメーンなので。そしてボールを奪った時の状態で、その後の攻撃が全部決まる。だから、全然違いますよね。
――「そもそものプロ意識がアンデルレヒトは違う」とも話していました。
アンデルレヒトは練習からすごく求めてきますね。べフェレンは若いチームでしたし、練習が結構適当なんです。先発ではない選手はやる気があまりない。明らかにモチベーションが低いです。紅白戦も笑いながらやっていて、ゴールを決められてもヘラヘラしている。空気感とか、動作、振る舞いとか、べフェレンはちょっとプロフェッショナルとは言えないところがありました。
アンデルレヒトは、本当に練習から試合みたいな感じでやっていますし、とても緊張感があります。若い選手が入ってこようが、関係なく、みんなそういうレベルでやっています。練習が終わっても、みんなジャグジーに行ったり、筋トレしたり、意識が高い。
もしベルギーの6強をJ1に入れたら……
森岡の実力は、すでにアンデルレヒトでも十分に認められている 【Getty Images】
難しいですね。ちょっとサッカーの質が違うので。ポーランドとベルギーを比べたら断然、ベルギーの方が上だと思いますけれど。
――あらゆる点で?
フィジカルならポーランドですが、サッカーのレベルはベルギーの方が上です。
――初めてヘンクと試合をした後「こんなにすごい控えの選手が出てくるとは思わなかった」と言っていましたね。
はい。ヘンクはメンバーが良いですからね。やっぱりプレーオフ1に出ている上位6チームは、それより下のクラブとはちょっと違います。下のクラブは(良い選手が)最大で11人という感じですが、上の6チームは控えのクオリティーもやっぱり高いですね。
――プレーオフ1のレベルはどれくらい高い?
もう全然違いますよね。(レギュラーシーズンとは)全く違うリーグのような気がします。それでもべフェレンが上のチームと良い試合をしていたのが不思議ですけれどね。
もしプレーオフ1に出ているチームをそのままJ1に入れたら、1位から6位まではベルギーのチームが占めると思います。
――ベルギーの上位6チームは、J1よりレベルが高い?
それは間違いないと思います。だけど、そこから下は多分、Jリーグとどっこいどっこいか、Jリーグのチームの方が強いんじゃないですか。
――上位チームと下位チームの差が大きいのがベルギーリーグの特徴?
大きいですね。
――Jリーグのクラブは実力が平均化されている。
はい。そうだと思います。
――ベフェレン時代には、「間違いなくベフェレンより(日本)代表の方がレベルは高い」と言っていました。
はい。
――アンデルレヒトならどうですか?
どうだろう……。アンデルレヒトは代表レベルぐらいじゃないですか。それくらいのレベルを持った選手が多いですよね。
――日々、そのレベルでトレーニングができているのは大きいですね。アンデルレヒトに来た当初は、そのレベルの練習に適応するのが難しくはありませんでしたか?
そうですね。すごくレベルが高かったし、戦術のこともあったので、若干、適応期間が必要でした。でも今は大丈夫です。やっぱり時間が解決してくれるんじゃないですか。慣れですよ。
<後編(5/14掲載予定)につづく>