川内優輝の海外挑戦を支え続けたカナダ人 プロ転向へ「彼の自由を守ることが大事」

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川内は“市民ランナー”であり“レジェンド”

川内は海外選手にも積極的に話し、楽しんでいるとラーナーさんは話す 【写真:アフロ】

 日本人選手の海外レースに帯同する時は、メンタル面でのサポートを重視する。「日本人選手の多くは“世界との差”を不安に感じる。それをどうポジティブな考え方に持っていくかが大事。そういう日本と海外との“壁”をなくしたい」。日本人だけで固まらず、できるだけ海外の選手ともコミュニケーションをとって、少しずつ不安を取り除けるように選手を促す。

 その点、川内は「すごくやりやすい」と話す。経験を積んで、今は日本人以外の選手とも積極的に話し、会話を楽しむ。生活面でも自分のスタイルを貫いている。

「他の選手は1日に何度も洗濯をしたりするけれど、彼は洗濯もしないで、他の大事なことにフォーカスする。そういう意味でプロフェッショナルですね。レース前に何に注力すべきか分かっていて、大事ではないことにまったくエネルギーを使わない。持っているエネルギーをどう効果的に使うか分かっているんです」

 二人三脚のタッグは6年になる。お互い「考え方が似ている」とラーナーさんは語るが、今でも“理解するのが難しい人”だと話す。

「普段は現実世界に住む、ごく普通の市民ランナー。一方で“川内優輝”という、まるで実在しないヒーローやレジェンドみたいな人。彼が学生の時から見続けてきたけれど、すごく変な感じがして、この2つを結びつけるのが難しい。同じ人なのに同じではないみたいなんです」

プロ転向も「本人は変わらないと思う」

「ボストンみたいな日が来ると信じていた」とラーナーさん。今後も二人で挑戦を続けていく 【写真提供:ブレット・ラーナー】

 歓喜のボストンマラソンから帰国した19日、川内は突如、来年4月のプロ転向を表明した。自己記録(2時間8分14秒)を5年以上更新できていないこともあり、公務員を辞めてより競技に専念するためだと報道陣に答えた。

「ここで言うとは思っていなかった(笑)」と、ラーナーさん。川内から胸の内を聞かされたのは年始のこと。詳細はまだ話せないというが、今後の目標やレースプランなど、2人でいろいろと話しているという。

「彼が今まで公務員ランナーという活動方針を取っていたのは、自由のため。マラソンと収入が別々だった。お金の心配がないので、小さな大会でも面白いと思えば出られました。スポンサーもいないので、誰にもコントロールされない。(プロ転向にあたり)仮にスポンサーの話があるとしたら、今までと同様に活動できるよう、彼の自由を守ることが一番大事だと思います」と話す。

 プロになれば“公務員ランナー”という枕詞はなくなる。海外では「お金のためのプロ転向」という声もあるのだという。しかし、二人の気持ちは一緒だ。これまで通り、二人三脚で夢を追いかけていく。

「プロになっても本人は変わらないと思う。彼がやっていることはすべて分かっているから、このままやってほしい。僕の仕事のやり方も変わらない。一生懸命やるだけです」

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)

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