コロンビアの10番はヒラメキの怪物 ハメスがピッチで見ている「すげえもの」
コロンビア代表が誇るクールな“ジェームズ・ボンド”
ロシアW杯でもハメス・ロドリゲスは間違いなくコロンビア代表のキーマンだ 【Getty Images】
童顔なので大きな選手というイメージはないが、身長は180cmある。利き足は左。プレーぶりは典型的な背番号10である。ゲームを作り、決定的なパスを出し、自らも得点する。4年前のワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本戦では、途中出場から吉田麻也を翻弄して1ゴールを決めている。
コロンビアには伝説的な名手カルロス・バルデラマがいた。1990年代に活躍したMFだが、ハメス・ロドリゲスはバルデラマの後継者といわれている。実際には利き足も違うし、プレースタイルもあまり似ていない。バルデラマはほぼショートパス専門の特異なプレーメーカーで、持ち前のミリメーターパスと、ライオンのたてがみのような髪型で知られていた。一方のハメスはレフティーで長短のパスを駆使し、バルデラマよりもよく走るし、点も取れる、より現代的な10番だ。ただ、卓越したボールタッチとインスピレーションは、2人に共通する部分。個性こそ違うが、スタイリッシュなプレーぶりも似ているかもしれない。
ピッチで「すげえもの」が見えるとき
ハメスが長らく比較されてきたコロンビア代表の「元英雄」バルデラマ氏 【Getty Images】
では、人と違うことを考える、誰も予測しないプレーを繰り出す、それができる選手は単なる変わり者なのだろうか。確かにバルデラマは見た目からして変わっていた。けれどもハメスは好青年風である。その言動にも、とくに変わった感じはしない。意外性は性格の問題ではないらしい。
「たまに、ふと見たら、すげえものが見えちゃうこともあります」
これは日本が誇るクリエイター、中村憲剛(川崎フロンターレ)の言葉だ。それが針穴を通すようなスルーパスになったりするわけだ。ただ、彼はそれを意図して作ってはいない。たまたま「すげえもの」がそこにあったと言っているのだ。キーワードは「すげえもの」よりも「見えちゃう」の方にある。おそらく中村憲剛やハメス・ロドリゲスでなければ、そもそもそれが「すげえもの」だとは気付かない。実は「見えちゃった」のではなく、意識せずに「見抜いて」いるのだ。
単に「見る」のではなく「見抜く」。女性の肖像画を描いているのに、パブロ・ピカソの絵がああなってしまうようなものかもしれない。同じものが違うふうに見えるのは、見ているものから取り込む情報量が、クリエイターと普通の人とでは違うからだ。