田嶋会長「勝つ可能性を追い求めた結果」 ハリルホジッチ監督解任に関する記者会見

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W杯で勝つ可能性を数パーセントでも上げていきたい

「少しでも勝つ可能性を追い求めた結果、この決断に至った」と田嶋会長 【スポーツナビ】

――2カ月前の監督交代。協会としての責任はどう感じてるのか?

 これをそのまま放置してやることで私の責任がなくなるのかというと、そうではないと思っています。私は日本サッカー協会の会長として、日本サッカーの発展を第一に考えなければいけないと思っています。2カ月前にもかかわらず、このような選択をしなければいけなかったのは、W杯で勝つ可能性を数パーセントでも上げていきたいということです。もちろん監督を代えて決勝までいくぞとか、ドラスティックに代えるのは無理だと分かっていますが、むざむざとそれを見ているわけにはいけなかったということです。

 この状況を打破するために、監督交代を決断したということです。ここまでなってしまった責任はもちろんあると思っていますが、みんながハリルホジッチ監督をサポートし、選手たちも精いっぱい努力してきたのは事実ですが、そのバランスが崩れてしまった。これまではハリルホジッチ監督で続けるつもりでしたが、ここにきて状況が変わったということです。

――西野さんに伝えたのはいつで、どんなことを言っていたか? また、5月31日のメンバー発表の日程は変更になるのか?

 西野さんに打診をしたのは先週の前半です。名古屋で会いました。その後、金曜の夜にも会って話をしています。西野さんをご存知の方はよく知っているように慎重な方なので、いろいろなことを考えた上で結論を出してくれました。ただ、最終的にはハリルホジッチさんに言った後と決めていましたので、最終的に決めたのは土曜日(7日)のパリの後です。

 どういったことを話したかというと、慎重な方なのではっきりとはおっしゃらなかったです。メンバー発表などの細かい点については、基本的な流れは大きく変わらないと思いますが、木曜日に皆さんにお伝えしたいと思っています。

――この4年間を考えると、代表監督が3人目になる。技術委員長も会長も代わっている。代表強化の継続性について、現時点で会長はどう考えているのか?

 会長が代わるのは2年の任期ごとに可能性があるわけで、自然なことだと思っています。技術委員長も代わってきているのは事実ですが、基本的な流れは僕は変えてはいけないと思っています。育成、指導者養成などは過去を踏襲し、いまも日本のスタイルを築き上げていると思っています。

 いい方に改善していくのは今後も実行していきます。人が代わろうと代わらなかろうと、それは実行していく。ただ、頻繁に代わるのがいいことかというと、必ずしもそうではないと思います。それはその都度、事情があるので一概にだめだとも言えないと思います。

協会との摩擦があったとは思っていない

――ハリルホジッチ監督と協会には、具体的にどのような摩擦やコミュニケーション不足があったのか?

 協会との摩擦があったとは僕は思っていません。ハリルホジッチ監督は合宿が終わると会長室に来てくれて、よく話をしてくれました。私はサッカーをやっていたのでサッカーに対する考え方はありますが、サッカーについてはあくまでも技術委員長やコーチ陣がその話するべきだと思っています。そこに摩擦があったとは思っていません。

 選手やスタッフとの摩擦は少なからずあるものだと思いますが、それについても把握しつつ、今回はそれを越してしまったというのがこの決断に至ったということです。協会との摩擦はあったとは思っていません。

――選手との信頼関係、コミュニケーションが原因ということだが、実際に選手たちから聞き取り調査などを行った上で判断したのか? また、選手たちからはどのような声が上がっていたのか?

 先ほど申し上げた通り、コミュニケーション、信頼関係がなくなるのはひとつの象徴的な部分であって、細かいことを挙げるのはもちろん可能だと思います。ただ、そのことが引き金になったのは間違いありません。この件だけでなく、細かいことはスタッフなどからも直接聞いています。誰からというのは申し上げられませんが、直接選手からも話を聞いたこともあります。ただそれをうのみにするのではなく、総合的に判断して改善すべく動いてきました。継続してそういう作業はやってきた中で、最終的にこういう判断をしなければいけない状況にマリ戦やウクライナ戦のときになったということです。

――世界中で驚きのニュースとして受け止められている。半年前くらいにさかのぼっても、事例として(直前に監督を解任して)W杯のグループステージを突破した例がない。客観的な状況と、日本代表の現状を見てどう考えているか?(河治良幸/フリーランス)

 われわれが(W杯最終予選の)初戦でUAEに負けたとき、「初戦で負けたら予選突破できない」と皆さんから言われました。今この時点で代えたからといってすぐ突破できるわけではありませんが、代えないで突破できないケースを僕はむざむざと見ているわけにはいかなかった。少しでも勝つ可能性を追い求めた結果、この決断に至ったということです。

 はっきりしているのは、初戦が本当に大切なのは間違いないと思っています。ただ(本大会のプランなどは)監督に、木曜に聞いていただければと思います。

――先ほど選手と監督の信頼関係やコミュニケーションと言っていたが、それは欧州遠征の前からあまりなかったように感じる。それを変えるには監督か選手が変わらなければいけないが、日本サッカー協会はどのような努力をされたのか? また、それをつなぐ役割が西野技術委員長だったと思うが、西野さんにも責任があったと思う。その方に監督を任せるというのは流れ的に自然ではないと思うが。

 皆さんは一部の選手からコミュニケーションのことを聞いてそうおっしゃっていると思います。もちろん一部の選手からそういう意見が出てくるのはわれわれも把握していますし、じゃあ全体でどうだったのかも把握しながら、年末にはE−1選手権(EAFF E-1サッカー選手権)で韓国に大敗した後も議論し、多くの情報を得ました。

 そこでも(監督を)代えるリスクと、誰が次にやったらいいんだと議論した結果、継続という判断にしました。その中で西野さんは、ハリルホジッチ監督を最後までサポートしました。そういうロイヤリティー(誠実さ)があるからこそ今回、監督になったわけで。技術委員長として、代表チームをサポートすることに徹してくれていた。最終的にはこういう結論になってしまったわけですが、最後まで頑張ってくれていたからこそ、私は西野さんを選んだということです。

 協会の努力については、さまざまな選手と話し合いの場を持ったりしました。ただ本来は協会がやるのではなく、技術委員会やスタッフがやるべきで、それは誰もが分かっています。やはり、本当に内部の人たちが改善しようと思わないと変わらないわけで、その意味では全員が、スタッフも、選手たちも努力したと思っています。それが最後まで改善できなかったというのが、この結果になってしまったのだと思います。

外部の人に指揮をさせるリスクの方が高いと判断した

――4年前のW杯が終わった後に、世界のトップレベルやW杯を知っているのがハリルホジッチ監督を選択した理由の1つと聞いた。追い込まれた状況で西野さんという説明はあったが、今までの流れとの矛盾や違いがある。西野さんを選んだポジティブな理由を教えてほしい。

 ザッケローニ監督が成果を出せなかったことの反省、その当時の技術委員会での反省で、W杯を指揮していないということが1つ挙げられていました。(W杯の)指揮経験がある監督ということでアギーレさん、その次がハリルホジッチさんになったわけです。お2人ともW杯で素晴らしい成果を挙げられています。ただ、ここはもう緊急事態になってしまったということです。だから、最後までハリルホジッチ監督のチームをサポートし続けた西野さんを選んだということです。

 もちろんみんながサポートを惜しまなかったわけですが、西野さんのこれまでの経験もあり、外部のまったく関係ない人を連れてきて指揮をさせるリスクの方が高いと判断しました。だから内部の人を選んだということです。それに、もしそのロジックを続けていくと、岡田(武史)監督以外に日本代表の監督ができなくなってしまう。そこはこのW杯後に、われわれもあらためて考えなければいけないとは思っています。

――西野監督の契約期間は? また後任の技術委員長は誰になるのか?

 まず契約期間はロシアW杯までです。後任はいま人選をしているところで、できれば次の木曜には理事会に出したいと思っています。

――マリ戦、ウクライナ戦の後、かなり日にちが経っているが、ウクライナ戦の直後に会長としては気持ちを決めていたのか? 法務的な部分はすでに整理できていたと思うが、ウクライナ戦から今にいたった経緯をあらためて教えてほしい。

 ウクライナ戦の前に考えていたのはシミュレーションであって、具体的な法務的な手続きを調べたことはありません。それだけハリルホジッチ監督を信頼してサポートしていた。ただウクライナ戦の後、さまざまな情報を収集した中で、このような決断になるかもしれないということで、さまざまなことをしっかりと分析し始めたので少し時間がかかったというのが経緯です。

――最終的な意思決定は1人で行ったのか?

 最終的な意思決定は会長の専権事項だと私は認識しています。ただ、多くの人に相談しました。よく漏れなかったなというくらい多くの人に相談しました。ただ最終的には会長が決めなければいけないことだと思っていました。特にこのような緊急を要する決断でしたから。

――今の会長の話を聞いていて、いかに技術委員会が機能していなかったのかが分かった。その中での英断だったが、日本代表のノルマであるベスト16を達成できなかった場合、会長自身はどう責任を取ると考えているのか?(六川亨/フリーランス)

 この決断をしなければ、私の責任はなかったのか? ということです。会長はそのときそのときで、日本サッカー協会の成長のために必要な決断をしていくことが責任だと思っています。やめるやめないということを言うつもりはありません。ただ、ベスト16に入れる可能性を1パーセントでも上げるための決断をする。それが私の責任だと思っています。

 もうひとつ、技術委員会が機能していなかったという点については、まったくそんなことはありません。彼らは必死に、どう改善していくのかをやってくれていました。監督主導でやっていたように見えたと思いますが、そのサポートをしっかりしているのを僕は見ています。だからまったく機能していないということはないと思っています。

 ベスト16を突破できなかった責任については、常に考えなければいけないと思います。ただ、誰かがやめれば済む問題なのかどうかも含めて、私は考えていきたいと思います。ただ責任を恐れて何もしないのではなく、その責任をまっとうするのは、今の状況で少しでも勝つために決断をする、それが私の責任だと思っています。

――今後のメンバー発表について、2段階で発表すると言っていたが今後、変わっていくのか?

 もともとタイムリミットがあって決めていることなので、大筋は変えるつもりはありません。ただ、今後どうするのか、最終戦が終わってから23人にするのか、(ロシアに)連れていってから落とすのか、それは木曜までに分かればお伝えしたいと思っています。

 ありがとうございました。僕はこの危機をしっかりいい方向に持っていきたいと思います。オールジャパンで、われわれのコーチングスタッフ、アドミニストレーション(事業)、トレセンコーチ、JFAハウスにいる人、皆さん(=報道陣)、メディアを通して応援してくださっている方々、日本がここでしっかりと団結していくいいチャンスにしたいと思っています。残念ながら違う方向にあったと僕は認識しています。日本代表をいい方向に持っていくチャンスにしたいと思っています。ですので、どうか応援をよろしくお願いいたします。

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

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