前田健太が意識したエクステンション 結果を大きく左右する小さな差

【NHK ワールドスポーツMLB】

 大谷翔平が高校1年の時に書いた「目標設定シート」を初めて見たときの驚きを、当分忘れることはないだろう。目標の「ドラ1、8球団」(当時の彼は8球団からドラフト1位指名される選手になることを目指していた)に向けて、何を磨いていくべきなのかが書きこまれていたのだが、そこに「回転数アップ」「ボールを前でリリース」という言葉があったのだ。

MLBのStatcast。レーダーでボールの動きを測定 【NHK ワールドスポーツMLB】

MLBのStatcast。高精度カメラで人の動きを測定する 【NHK ワールドスポーツMLB】

 MLBがデータ分析システムである「Statcast」を導入する2015年まで「ボールの回転数」や「リリースポイントの位置」は、大事だとわかっていても測定するのはほぼ不可能な数値だった。にもかかわらず、大谷が高校生の時点でこの概念を知っていたということは、若くしてピッチングを理論でとらえていた可能性を示唆している。

データでわかった前田の苦戦

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 ドジャースの前田健太は17年の前半戦、早い回から打ち込まれ、苦しんでいた。何が原因なのか。手がかりを求めて「Statcast」データを分析したところ、浮かび上がったのが「エクステンション」だった。エクステンションとは、ピッチャープレートからボールのリリースポイントまでの距離のこと。この数値を見れば、ボールをどこでリリースしているのかわかるのだ。

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 打ち込まれることの多かった1回に限定して、前田投手のエクステンションを調べると、16年は平均188.1センチ、17年は6月5日時点で179.1センチと、9センチ短くなっていたことがわかった。解説者の小宮山悟氏がロサンゼルスに飛び、この事実を本人に伝えた。

前田:(エクステンションが)短いと、どうなんですか?

小宮山:ダメってことです。それだけ自分寄りでボールを離しているということです。ノーラン・ライアンを育てたピッチングコーチから「リリースポイントがバッター寄りになればなるほど打たれない」と聞いたことがある。体感速度で言うと、10センチ違うと5キロぐらい違うらしい。

17年の前半、後半で大きく改善

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 後半戦からポストシーズンにかけて、前田の成績は劇的に改善。ドジャースのワールドシリーズ進出に大きく貢献した活躍を記憶している人も多いだろう。「Statcast」で調べるとエクステンションは長くなっていた。あのときのアドバイスが役に立ったのだろうか? この3月、本人に直接確認することができた。

「小宮山さんに言われたあと、すごい意識しました。俺、帽子に書いたんですよ『リリースを前に』って。この番組はホントありがたいですね。自分の為になる」

 16歳のときに「ボールを前でリリース」と記していた大谷。メジャーリーグでは、それができているかどうかを自分でチェックし、ピッチングを改善することができる。データ革命が進む新天地で、どうか大きく羽ばたいて欲しい。

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NHK「ワールドスポーツMLB」

BS−1で放送しているメジャーリーグ専門番組。投球の軌道をCGで再現できるツール「ゼウス」を独自で開発するなど、データ分析に力を入れています。3月は大谷翔平情報をたっぷりとお伝えします。

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