近年の甲子園で強さ際立つ東海大相模 強豪校対決で聖光学院に圧勝

楊順行

大きかった1回先頭打者の安打

1回表に先制点を許した東海大相模はその裏、先頭の小松がヒットを放ち、嫌な流れを断ち切った 【写真は共同】

 強豪校同士、まるで棋聖戦のような丁々発止の読み合いは初回だ。

 聖光学院(福島)は初回、「甲子園練習が(雨で)できずに、初めてのマウンド。力が入りました」と言う東海大相模(神奈川)・齋藤礼二の立ち上がりを、2番・横堀航平の二塁打などで攻めて先制。昨秋の防御率が0.00の齋藤にとっては、このチームで初めて喫する公式戦の失点だった。

 だが、その裏の東海大相模。先頭の小松勇輝が、聖光の先発・高坂右京の初球スライダーを逆らわずにレフトに弾き返す。

「スライダーも頭にありましたが、とにかく初球から行こうと考えていました」

 こう言うキャプテンのヒットはチームに勢いを与え、この回4安打を集中。四死球をからめ、さらに8番・齋藤の3ランも飛び出して一挙6点だ。

 東海大相模・門馬敬治監督が話す。

「365日のうちの特別な日じゃないんだよ、自分たちの普段の基準でプレーしなさい、とは言ってきましたが、やはり1回表は心のコントロールができませんでした。ただ、“悪いところがすべて出たね”と話したところで、小松のヒット。相手の一番いい球、初球ストライクを取りたいスライダーを弾き返してくれたのが大きいですね。先制されたところでみんなに元気を与えましたし、相手投手は変化球狙いを意識して球数が増え、それが四死球にもつながった」

アグレッシブ・ベースボールは健在

エースの齋藤は3点本塁打を放つなどバットでも活躍した 【写真は共同】

 聖光・斎藤智也監督は、こう脱帽した。

「むこうは役者ですね。高坂は外のまっすぐを有効に使うピッチャーなんですが、あえて変化球を狙ってきたところはさすが。また、並のチームなら狙っても打ち損じがあるのに、それがない。予想した最悪の展開になりました」

 逆転し、大量リードした東海大相模は2回以降、齋藤も本来の出来を取り戻し、12対3で圧勝した。12安打で12点。第二リードを最大限に取り、つねに先の塁を狙うアグレッシブ・ベースボールは健在だ。得点圏に走者が進むたび、臨機応変に三塁ベースコーチが代わるのは、「実際に試合に出ていて、試合勘のある選手が三塁ベースコーチに立つんです」(小松)と言う抜け目のなさだ。

 そして門馬監督が評価するのは、「アウトなるにしても、簡単には終わらない。低めのボールをカットしたり、きわどいボールを見極めたり……」。それが、相手にとってはボディブローなる、というわけだ。

大阪桐蔭を上回る甲子園での勝率

 それにしても近年の東海大相模、甲子園に出てきたときは快進撃が目立つ。最近、別のことで話題になった一二三慎太(元阪神)がエースの2010年夏には準優勝、翌11年センバツは菅野剛士(現千葉ロッテ)、田中俊太(現巨人)らがいて優勝。14年夏は初戦負けしたが、15年夏にエース・小笠原慎之介(現中日)で優勝したのは記憶に新しい。それ以来の甲子園だ。

 試みに、今回を含まず東海大相模の直近4回の甲子園での星取りを計算すると、14勝2敗。うち、決勝進出が3回で優勝2回だからすごい。平成の横綱とも言える大阪桐蔭は、直近4回の甲子園で11勝3敗だから、ここのところの甲子園勝率では、東海大相模が上と言ってもいい。

 7年ぶりとなる今センバツも、大会前から優勝候補の一角にあげられていた。齋藤は、秋の公式戦39回2/3を無失点。スライダー、フォークの精度が高く、要所で三振が取れるのが強みだ。打線は、高校通算50発に迫る森下翔太が中心。公式戦の打率は5割超えで、1、2番を打つ小松、山田拓也らも高打率だ。新チーム結成からの秋の成績は、練習試合を含めてなんと62勝2敗。黒星のうちひとつは、県大会決勝で死球を受けた齋藤が登板していない関東大会のものだ。

 そして、「現状維持は衰退」という門馬監督が、「冬を越えてどんな選手が出てくるか、ワクワクしています」と話すように、4番に抜擢(ばってき)した背番号17の上杉龍平がこの試合では2安打2打点。球速ではチームナンバーワンで、秋の段階ではベンチに入っていなかった2年生・遠藤成も、甲子園デビューを果たしている。

 東海大相模の次戦は第7日、静岡が相手。ちなみに15年の夏も、初戦で聖光学院に勝ち、そのまま全国の頂点に立っている。
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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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