Jリーグを席巻する「恐るべき10代」たち サブ以上スタメン未満からの脱却なるか
「新人扱い」がピント外れに見える久保のプレー
言わずと知れた超新星・久保建英(中央)。相手はおろか、見方もそのアイデアについていけない場面も 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
そうは言ってもまだ、スタメンの座を手にしていない。開幕戦では交代出場するや、攻撃のリズムをがらりと変えている。数秒後の未来を見通すプレーぶりは、まるで倍速映像を見るかのようだった。とにかく、テンポが速いのだ。情報処理のスピードが速く、相手はおろか、味方も久保の企図(アイデア)についていけない場面もあったほど。周囲とイメージの共有が進みさえすれば、久保自身の見せ場がもっと増えてもおかしくない。
長谷川健太新監督の下で公式戦初勝利を飾ったルヴァンカップのアルビレックス新潟戦で4人のDFが群がる密集から脱け出し、殊勲の決勝ゴールを決めた。自ら「得意の形」と語る左45度付近から、鋭く左足を振り抜いた。ボールを持ったときの実力は、誰もが認めるところだろう。ただ、長谷川監督はスタメン起用に慎重だ。前線からガンガン圧力をかけるアグレッシブな守備に物足りなさがあるせいか、ボールがないところでのハードワークをどこまで消化できるか。それが、長谷川政権でスタメンを勝ち取るうえでのノルマかもしれない。
「ルヴァン経由リーグ戦行き」の切符をつかんだ浦和の荻原。初出場で2得点を奪う活躍を見せた 【(C)J.LEAGUE】
第4節で「ルヴァン経由リーグ戦行き」の切符をつかんだ若者は、何も荻原だけではない。同じ18歳の新井光(湘南)に加え、横浜FMの吉尾海夏(19歳)や名古屋の成瀬竣平(17歳)もチャンスを得ている。さらに、ヴィッセル神戸の郷家友太(18歳)は右のMFとして先発リストに名を連ね、2−0の勝利に貢献。ルヴァンカップにおける働きがフロックではなかったことを証明している。AFCチャンピオンズリーグでは、18歳の安藤瑞季(C大阪)も途中出場を果たした。
負ければクビが飛ぶ可能性もある指揮官に、実力のない選手をわざわざピッチへ送る余裕などない。いずれも「資格あり」と認められてのデビューである。しかも、不思議と臆する選手も、入れ込みすぎる選手も少ないのが印象的だ。むしろ、見ているこちらの方がアドレナリン全開――のような気がしてくる。まるで「試合に出たくらいで騒ぎなさんな」と、諭されているかのようだ。本来の力をストレートに出し得る落ち着きが、この世代の強みなのか。そうだとすれば、やはり「恐るべき10代」である。