ソフトBに加入・西田哲朗の決意 日本一のピースになる、どんな役割でも

週刊ベースボールONLINE

楽天での8年間には感謝、だが…

本職のショートを中心に、内野の全ポジションを守れる万能性が武器。新天地の内野陣はベテランが多いだけに、西田に訪れるチャンスもありそうだ 【写真=BBM】

 関大一高から10年にドラフト2位で楽天に入団。三拍子そろった内野手である。5年目の14年には、主にショートのポジションで131試合に出場したキャリアを持つ。しかし、レギュラー定着が見込まれた翌15年は、キャンプイン直後の左足甲の骨折などもあって62試合出場にとどまると、16年は出場数が11試合にまで減少。17年は茂木栄五郎の台頭に押される形になっていた。心機一転を図るトレード。この機を逃すわけにはいかない。

 トレードの連絡を受けたのは、チームが倉敷での秋季キャンプ中でした。僕はキャンプに参加していなくて、仙台で練習していました。本当に急な話で、最初は何が何だか分からなかったですけど、チームが変わることだけは何とか受け入れようとしていましたね。それを実感したのは、宮崎で行われていたソフトバンクのキャンプに合流してから。ユニホームを着たときに本当のことなんだと理解しました。

 昨年まで8年間、お世話になった楽天には、1年間、1軍で使ってもらったシーズンもありましたし、本当に感謝をしています。しかし、ケガが重なったことなどもあり、自分自身、もがいていた部分があったように思います。欠かしてはいけないはずの「1軍の舞台で活躍する」という強い気持ちを持てていなかった気がするんです。

 16年、17年は2軍生活が多くなる中、結果を残せていた時期もありました。それでも1軍では与えられたチャンスで期待に応えられず、2軍に戻ることの繰り返し。そんな自分に対してもどかしい思いでいました。1軍で活躍できていた一時期を顧みて、「前はもうちょっとできていたのにな」とか、過去ばかり追い求めていた部分もあったと思います。要は気持ちの部分で負けていたんですよね。

 だけど14年に1年間、1軍でプレーする前の自分は、プロに入団してから右肩上がりに成績が上がってきていて、「やれるぞ」っていう自信も持っていたと思うんです。しかし、一番やらなければならない1年だったはずの15年にケガが重なったこともあり、満足いく体の状態でプレーすることができませんでした。そんな自分自身に不甲斐なさを感じることがありましたし、2軍で試合に出て、ある程度成績を残していることに甘んじている自分もいたように思います。そういう精神状態では1軍で活躍することが難しいのは当然ですよね。チームにどう貢献するかという発想もまったく足りていなかったですし、要は自分で自分に言い訳をして逃げ道をつくっていたんですよね。

 そうした点に気づくことができたのも、年齢を重ねて今、こうして新しい環境でプレーできているからです。まだシーズンが開幕したわけではないので、これからどうなるか分かりませんけど、少なからず、この短い野球人生の中で違ったチームを経験できることは貴重なことです。ましてや常に日本一を目指す常勝軍団のソフトバンクですから、余計にそう思います。ルーキーのようにフレッシュな気持ちでやれていることがうれしいですね。ようやく自分に素直になれている感覚があります。

移籍してきて感じるソフトBの強さ

 宮崎で行われた練習試合とオープン戦では、すでに内野の全ポジションで出場している。内野のユーティリティープレーヤーとしてチームに貢献することが、第一の目標となる。そしてチームはショートの今宮以外、内野の主力が軒並み30代中盤の年齢であることを考えると、遠からず世代交代の課題に直面することは必至。その候補として存在感を示していく必要もある。西田にとって野球人生を大きく左右する、18年シーズンが幕を開ける。

 楽天のベンチから見ていて、ソフトバンクのベンチの明るさはものすごいものがあると思っていました。その中心にいる松田さんは、練習の姿を見ていても見習うべきだと思わされる部分がたくさんあります。キャリアとしてはベテランと言われてもいいでしょうけど、ノックを受けていても一番に声を出しているのが松田さん。キャンプでも「声出してるか?」って気にかけてくれていたので、必死に声を出していたらシートノックが終わっているってこともありました(笑)。楽しく野球をやっているあの姿は、僕にとっては大きな刺激です。ほかの選手も明るいし、元気があるし、それもソフトバンクの強さの要因の一つだと感じました。

 そんなチームに来たからには1軍でやらないといけないと思います。リーグ優勝の、そして日本一のピースになる。どんな役割でもいいからそうなりたいと思っています。選手層が厚いのは分かっていますし、チャンスが多くないことも分かっています。自分が思うようにならないことはこれまで以上にあるかもしれません。しかし、そうだとしても、常に前を向いてやっていくことだけは決めました。

 環境が変わって、野球との向き合い方に気づいて、本当にうまくなりたいと思っています。そしてソフトバンクファンの皆さんに早く僕のことを知ってもらえるように、1軍の舞台でたくさん活躍したい。野球がうまくなるのにまだまだ遅くないと思いますが、結果を待ってくれないのがこの世界です。1日1日をムダにすることなく、野球と向き合っていきたいと思っています。

(取材・構成=菊池仁志、菅原梨恵)

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