中央学院に受け継がれるノムさんの考 “管理しすぎない”指導で初の甲子園
野球が楽しかった濃厚な2年間
就任9年目で中央学院を初の甲子園に導いた相馬監督。社会人野球部の強豪シダックスでプレーしたことが大きな影響を与えているという 【写真:高木遊】
今春の第90回選抜高校野球大会(3月23日〜13日間/兵庫・甲子園球場)に初出場する中央学院(千葉)の相馬幸樹監督は感慨深くそう話す。
活動期間は14年(1993〜2006年)という短い歴史の中で、都市対抗出場7回(準優勝1回)、日本選手権出場4回(優勝1回)という燦然たる成績を社会人球界に残したシダックス硬式野球部。その伝説的なチームに相馬監督は投手として02年、03年に在籍。高卒、大卒、他チームからの移籍組に加えて、キンデラン、パチェコというキューバ代表の長距離砲がおり、さまざまなバックグラウンドを持つ選手たちが力を結集していた。
「人に恵まれました。個性的で熱い人が多かったですね。僕自身活躍できない苦しさもあったけど“野球って楽しいな”と思える時間でした」と相馬監督は振り返る。
「古いしきたりのようなものはゼロでした」と語るのは、シダックス硬式野球部で長年マネージャーを務めた梅沢直充氏(現日本KWB野球連盟事務局長)だ。例えば「移動バスの車中で寝てはいけない」というルールがある強豪社会人チームが当時あったが、「ウチは爆睡していました」と梅沢氏は笑う。
また全体練習も短かった。練習は基本的に午前中から昼すぎまで。そこで集中して行い、あとは個人練習で「結果を残すか残さないか」は本人次第。チーム内の競争はシビアで、短期間で戦力外になることも珍しくはなかった。毎年有力な選手たちが入り競争は激しかったが、チーム内の絆は強かったと、梅沢氏も相馬監督も口を揃える。
「厳しいことを言われたり、いろいろあるけど、ラテンのノリというか“頑張ってグラウンドで結果を出そうぜ”という前向きなチームでしたね」(梅沢)
「先輩方が若手にとってやりやすい環境を作ってくれていましたし、今もたくさん応援してくださいます。もう野球部はないのに、いまだにOB会も毎年ありますね」(相馬)
部員全員で熱くなれる環境作り
投打の中心・大谷が注目される中央学院だが、相馬監督は部員全員で熱くなれる指導や環境作りを心掛けてきたという 【写真:高木遊】
その中で相馬監督も野村監督から「投球におけるコントロールというのは、気持ちのコントロール」と説かれ、ブルペンに来てからフォームを悩むのではなく、ブルペンに入るまでに準備とイメージを100%にしてから投げることで、次に向けた収穫や課題が見つかることを教わったという。
この年限りで戦力外とはなったが、さらなる学びを深めようと相馬監督は母校の大阪体育大の大学院修士課程に入りスポーツ心理学を専攻。その後2007年に中央学院の監督に就任した。
中央学院では部員全員で熱くなれる指導や環境作りを心がけた。やはりその原点はシダックスだという。
「いろいろなレベルの選手がいますけど、全員を“野球選手”として見ていますし、指導によって“化けさせたい”と思っています。そして大会になったら、みんなで頑張ることができて、みんなで応援できるチームというのを目標にしています。シダックスの時は裏方に回っていても都市対抗予選は燃えましたし、勝ったら泣けてきましたからね」
また、必要以上の管理をしないことも相馬監督の特徴だ。昨秋の関東大会でも雨天中止が続いた際には、選手をカラオケに連れていきリフレッシュさせた上で、「遊んだからには明日からしっかりやろうな」と気持ちを引き締めさせた。
プレーでも高校生なら欠点は目につきやすいが、すべてを直してしまうのではなく、ある程度は目をつぶるようにしている。
「選手たちをみんな同じ単色にしないようにしていますね。やっぱりそれを9色、18色にしないと、いい絵は描けないかなって思うんです」
まもなく降り立つ夢舞台で、個性豊かな選手たちがグラウンドを駆け回り、スタンドも一体となった熱い戦いを見せてくれることに期待したい。そして、そこには間違いなく、今は亡きシダックス野球部の遺伝子が着実に受け継がれている。
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